2006年11月3日金曜日

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20世紀を席巻した壮大な嘘

 


さぁてさてさて、今日も残り 30 分となってしまいました。
さて何をネタにしようか……。

ネタがないので、書評なんぞを。

「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原 万里 著/角川文庫

著者はご存じ、元ロシア語同時通訳にしてエッセイストだった米原万里女史。とても残念なことに、今年若くしてお亡くなりになりましたが、本書は女史にとってはおそらく唯一の「ノンフィクション」と呼ぶべき作品です。

内容を云々する前に、時代背景を書くべきなのですが、著者たる米原万里女史は、1960 年から 1964 年の間(つまり 10 歳から 14 歳の間)、今は亡き「チェコスロバキア」の首都・プラハの、「ソヴィエト学校」に留学されていました。本書は、その「ソヴィエト学校」で知り合った 3 人の友人との、三十数年ぶりの再会を描いたものです。

「ソヴィエト学校」なる学校は、世界各地から集まっていた共産党幹部の子弟のための学校で、当然、生徒も世界各地から集まっていたわけですが、その中から、ギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、そして今は亡きユーゴスラヴィア人のヤスミンカ(ヤスミンツァ?)の「その後」がつづられています。

単なる「書評」でも面白くないので、ちょいと感想も書いておきましょうか。

やはり、圧倒されるのが、そのリアリティにです。もちろん、ノンフィクションな訳ですからリアリティがあって当然なのですが、ソヴィエト共産主義体制の崩壊という、数世紀に一度あるか無いかの大激震が通り過ぎた後の旧東欧において、一個人の辿った(辿らざるを得なかった)激動の足跡が、リアルタイムに記されているわけですから、そのリアリティの重さたるや、筆舌に尽くせるものでも無い……ところを、余分な贅肉だけを削ぎ落としたスリムな文章にしてしまう作者の筆力は、驚嘆に値します。

ちなみに、同じくプラハのソヴィエト学校を舞台にした、女史の半自伝的小説(つまり、事実を元にしたフィクション)「オリガ・モリソヴナの反語法」も、ご存じの方も多いかも知れませんが、一読に値します。小説より奇なる事実の上に成り立つ小説ですから、その奇っ怪たる物語展開は、20世紀を席巻した壮大な嘘の上に成り立っていたあの国へのオマージュとして、十二分に通用すると思います。

うー、全然書評になってないじゃん。やっぱ 30 分でまとめるのは無理があったか……。

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