2007年2月25日日曜日

次の投稿 › ‹  前の投稿

それは、糸が切れた凧のように空を舞った

 


期待の(誰が?)大型連載第 2 弾 !

この Blog は読者の年齢層が意外と広いので、まず、「日航ジャンボ機墜落事故」について、まとめておく必要がありそうですね。

その時、何が起こったか

事故が発生したのは 1985 年 8 月 12 日。その日の 18:12 に羽田を離陸し、大阪・伊丹に向かっていた日本航空のボーイング 747(747-SR100)が相模沖の海上を飛行中、18:24 頃に機体後部の圧力隔壁が破壊され、本来は隔壁によって気密を保たれていた客室から噴出した空気によって、垂直尾翼の大半が破壊されるという事態に見舞われました。

さらに信じがたいことに、ボーイング 747 の操舵などに使用される油圧系統が、4 系統すべて破壊されるという異常事態となり、結果として 30 分近く迷走を続けながら、18:56 に群馬県多野郡上野村の高天原山に墜落、という結末を迎えます(世間では「御巣鷹山」という地名が一人歩きしていますが、実際には、御巣鷹山は墜落地点の「隣の山」だそうです)。乗員乗客 524 名のうち、生存者はわずか 4 名。単独機による航空事故では世界最大の死者を出した事故とされています。

航空機による事故で最も多くの死者を出したのは、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ空港で起こったジャンボ機同士の衝突事故で、死者 583 人。無線が一瞬混信したことが事故の原因だ、とする見方も存在するようです。

それは、糸が切れた凧のように空を舞った

さて、日航ジャンボ機墜落事故の話題に戻りましょうか。この時点で特筆すべき点は、「4 重に冗長化されているはずの油圧系統が全滅した」結果、500 人強が乗ったジャンボジェット機が操縦不能のまま、30 分近く迷走を続けた、という点に尽きます。30 分近い迷走という、多くの航空関係者に衝撃を与えたとされるこの事態は、何故起こってしまったのでしょうか。

SPoF とは何か

停止が許されないシステムを設計する場合、もっとも排除すべきは "SPoF"、すなわち、Single Point of Failure と呼ばれる部位です。Single Point of Failure は、「ここが壊れたらシステム全体が動作不全に陥る」という部位のことで、例えば、乗用車ならエンジンも、ステアリングも、SPoF と言えます(エンジンが壊れたら、車は走らないですよね)。

SPoF を排除するにはどうすれば良いか。全く同じ仕事をするものを複数用意すればいい、となりますね。高度な仕組みになれば、正常時は 2 系統が協調して動作し、どちらかの系統に異常が発生した場合も、残された系統で動作を続ける、という形も取れるでしょう。では、2 系統が同時に破損した場合はどうなるか。こうなってしまえば、残念ながら救う手だてはありません。2 系統の破損による動作不全を忌避するためには、当然ながら、3 系統、あるいは 4 系統以上用意する必要が出てきます。

快適な空の旅は電波任せ

ジャンボジェット機は、例えば大阪の伊丹空港を離陸して、高知県の足摺岬上空を経由して那覇空港に向かう、といったルートを取ります。足摺岬には電波を発信する施設(電波標識、ですかね?)があるため、飛行機は電波の発信元に向かって飛び続ければ、足摺岬には辿り着くことができます(太平洋戦争末期、米軍の B29 が、日本の放送局の電波を標識代わりに使っていた、というのは有名ですね)。

問題は足摺岬から先で、洋上を決められたルートで飛行するためにはどうするか(電波標識は使えない、と仮定してください)。例えば、車ならカーナビというものがありますが、飛行機も同じで、最近だと GPS を使用して、カーナビライクに自機の位置を確認できている、と思います(確信は無いのかよ

電波が使えないなら、自分の頭で考えよう

で、GPS がメジャーになる前はどうやっていたかと言いますと、INS と呼ばれる「慣性航法装置」が使われていました。これは、装置自体(=飛行機自体)にかかる加速度(減速度)をもとに計算することで、自機の方向や移動距離がわかる、というものです。

INS のいいところは、電波標識やドップラーレーダー、GPS のように、機外との電波のやりとりが発生せずに、すべてを自律的に行えることでしょうか。ですので、GPS 全盛の現在でも、INS もバリバリ現役で使われている…… と思うのですが、最近この辺が勉強不足で自信がありません(こら

さて、INS により、洋上飛行においても決められた航路を守ることが飛躍的に容易になったとされますが、それだけに、INS の故障は死活問題となり得ます(どこを飛んでいるのか、機長にもわからなくなります)。では、INS を 2 個用意すればいいのでしょうか?

壊れた電卓はどっちだ?

仮に、電卓を 2 個持っていたとします。両方に同じ計算式を入力して、返ってきた答が違う場合は、どちらを信用すればいいでしょう? これは一種のパラドックスとも言えるのですが(そうなのか?)、正答は「自分で検算する」となってしまいます。

ただ、実は、もっと簡単な方法があります。もう 1 個電卓を買ってくればいいのです。おかしな電卓が 1 つだけの場合は、これで解決しますね。

そんなわけで、常に正確であることを求められる INS(慣性航法装置)は、例えばボーイング 747 の場合、「2 重化」ならぬ「3 重化」されています。3 重化は、普通に機器を用意するのに比べて 3 倍のコストがかかります。ただ、「安全」がそれ以上に重要だと判断されたならば、安い買い物です。

「油圧 4 系統フェイル」はあり得たか

ジャンボジェットの「血管」とも言える「油圧系統」は、飛行機を実際にコントロールする、極めて重要な部位です。従って、INS の更に上を行く「4 重化」されていました(したつもり、でした)。しかし、それが破られてしまったわけです。それだけで、航空関係者の衝撃は激しいものだったでしょう。

今日はここまで

まだ、多分、だらだらと続きますです……。

前の記事次の記事

www.bojan.net
Copyright © 1995- Bojan International

0 件のコメント:

最近の記事