2008年7月8日火曜日

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ベンガルの「砒素入り水」

 


バングラデシュでは、井戸から汲み出した地下水に、大量の砒素が含まれていることが判明して、大変なことになっているそうです。

砒素は、即効性の毒物ではありませんが、継続的に摂取すると身体を蝕み、酷い場合は死に至るケースもある物質で、その毒性から農薬や防腐剤などに使用されます。

日本における砒素中毒の歴史

宮崎県高千穂町土呂久地区では、猛毒として知られる亜砒酸の採掘および精製が行われていた関係で、農作物が枯れ、川魚や家畜が変死したばかりか、鉱山の従業員や関係者、周辺及び下流域の住民にも深刻な健康被害をもたらしたと言います。

亜砒酸の精製自体は 1960 年代中頃には行われなくなったとされますが、何しろ砒素の毒性は後からジワジワと効いてくるわけで、公害訴訟が起こされたのが 1975 年、和解に至ったのが 1990 年、認定患者は 146 人、うち亡くなった方が 70 人だとされます。

土呂久鉱害についての記述は、高千穂町コミュニティセンター・歴史民俗博物館のサイトを参考にしました。

宮崎県には「土々呂」(トトロ)という駅もあるのですが、「土呂」には何か意味があるのかも知れませんね。イタリア語だと「牛」ですが、それはおそらく関係ないです(だったら書くな)。

それはそうと、この「土呂久」という地名、足尾や神岡(イタイイタイ病)ほどのネームバリューは無いものの、日本における「鉱毒」事件のひとつとして、社会科の時間には取り上げられていたような記憶があります。何とも痛ましい話です。

砒素汚染は公害に非ず

さて、鉱工業生産という意味では日本と比べて随分と水を空けられている感のあるバングラデシュ(「バングラ」の「デシュ」、即ち「ベンガル人」の「」という意味なのだとか)において、井戸水が砒素汚染とはどういうことか……と思ったのですが、これが何ともすさまじい話で。

まず、砒素による汚染は、バングラデシュのかなりの部分に広がっているとのこと。地図を見たのですが、汚染された井戸は、「特定の地域」というのではなく、国土全体にほぼ満遍なく立地しているようなのです。バングラデシュは決して広い国では無いですが、それにしても汚染地域が広すぎる印象があります。

第二に、砒素汚染の根源が、人工的なものではないこと、です。かつて、ヒマラヤ山脈にて造山運動が活発だった頃に噴出した砒素化合物が、長い時を経てガンジスを下り、ガンジスの河口部に堆積したのが、そもそもの原因なのだとか。ガンジスの河口部が、即ちバングラデシュ、とも言えます。

自然が原因の人災?

皮肉なことに、バングラデシュの人々は、もともとは川や池の水を汲んでは飲用する暮らしを営んできました。川や池の水を飲用することは、コレラなどの伝染病が蔓延するリスクが高いため、国際社会の援助で国中に井戸が掘られ、井戸水を常用するように「指導」してきたという経緯があります。ところが、その井戸水の多くが砒素まみれだったわけです。

現在のバングラデシュにおいては、川や池の水は衛生面で問題があり、地下水も砒素に汚染されているというわけで「どないしたらええねん!」という状態のようですが、より大深度から「深層地下水」を汲み上げれば大丈夫、なのだとか。

エビアンとハイオクと赤ワイン、一番安いのは?

各国の ODA や NGO などの援助で、急ピッチで大深度から水を汲み上げる井戸の掘削が進んでいるようですが、住民は「水はタダ」という意識が強く、掘削後の運用資金の確保に事欠くケースも少なくないようです。

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