2008年10月4日土曜日

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「静かで平和な川の上流」は実在するのか?

 


ひっさびさに写真ゼロ、ちょっぴり高度な?本文で勝負です!

「静かで平和な川の上流」は存在したか?

占冠(しむかっぷ)村の語源は「シモカプ」(静かで平和な川の上流)である、と紹介されていることが良くあります。他ならぬ世界の Wikipedia もそうですね。

占冠村(しむかっぷむら)は、上川支庁南部に位置する村。
村名の由来はアイヌ語「シモカプ」(静かで平和な川の上流)から。
(Wikipedia 日本語版「占冠村」より引用)

ほんのちょっとだけ調べてみたのですが、これ、なんかウソっぽく思えます。おそらく si-mo-ka-pet とでもなるのでしょうか。確かに、"mo" は「静かである」という意味ですし、お馴染みの "pet" は「川」です。"si" は「親」という意味で、"si-pet" であれば「親川」、つまり(支流に対する)「本流」となります。

ただ、この解釈(?)では、"ka" の意味するところが不明です。手元の「地名アイヌ語小辞典」や「アイヌ語(千歳方言)辞典」を見ても、それっぽいものは見つかりません。む、むっ……。

そもそも、アイヌ語で「平和」のことを何と言うか、わかんないんですよね。

「鵡川の本流」は存在する!

そんなわけで、ちょっと納得がいかなかったので、もう少し調べてみました。すると「シムカプ」(鵡川の本流)説が見つかりました。si-muka-pet となるんだと思いますが、個人的にはすごく納得の行く解釈です。

千葉大の中川裕先生の「アイヌ語(千歳方言)辞典」を見ると、"Muka" は「鵡川」を示すことが明記されています。また、鵡川の支流に「穂別川」があります。「穂別」は pon-pet、つまり「支流」という意味です。支流があるなら本流もある筈、鵡川の上流が「鵡川本流」と呼ばれても不思議はありません。

うん、やっぱ Wikipedia の記述は間違いじゃないかなぁ……。ほかにも「静かで平和な川の上流」説を採るサイトが恐ろしく沢山あるので……何とかしないといけませんね。

ムカムカっ……。

さてと。こうなったら乗りかかった船です。「じゃ、『鵡川』って何よ?」という疑問に取りかかりましょう。まずは世界の Wikipedia さんのご意見から。

市町村名の由来
アイヌ語の「ムカッ・ペッ」=「川尻のたえず動く」という名からとった説と「ムツクアツ」=「つるにんじんの多いところ」という言葉がなまったとする説とされている。
(Wikipedia 日本語版「鵡川町」より引用)

ええ……? なんか怪しい……ような……。「ムカッ・ペッ」は mukat-pet でしょうか。でも、mukat というアイヌ語が存在するのかどうか、わからないです。んんん……?

「ムツクアツ」に至っては、さらにわけがわかりません。muk であれば、「ツルニンジンの根」だと言いますから、muk-at であれば「む-かッ」となり、ドンピシャ(死語?)なんですが……。あ、そうか! そもそもが「ムツク」ではなく「ムック」(「ム」の強勢型)だとすれば、理解できます。ムッカァーッ!

八方塞がり……?

ちなみに、muk には「塞がっている」という意味もあります。「鵡川」の語源として、muk-pet(塞がっている川)を挙げるケースもありますね。(河口が)塞がっている川、と想定することもできるわけで、そういえば、鵡川の河口は砂嘴で塞がれている、とも言えます。うーーん、この仮説も捨てがたいですね。

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