2010年5月10日月曜日

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半身不随でヤリキレナイ川!

 


今週の補足トリビア

さて、ヤリキレナイ川です(笑)。いや、ベツに笑うことはナイんでしょうけど……。


では、改めて「ヤリキレナイ川」のおさらいです。

ヤリキレナイ川(ヤリキレナイがわ)は、北海道夕張郡由仁町を流れる石狩川水系夕張川支流の一級河川で、北海道道694号北長沼由仁線沿いを流れる。
(Wikipedia 日本語版「ヤリキレナイ川」より引用)

「石狩川水系夕張川支流の一級河川」と来ました。一級河川です。なんか凄そうです。とてもヤリキレナイ感じはしません。しかし、

全長は約5km。
(Wikipedia 日本語版「ヤリキレナイ川」より引用)

意外と短かったりします。この辺にヤリキレナイ感じを紐解く鍵があるのかも知れません(←

ヤリキレナイ川の真実

さて、この「ヤリキレナイ川」ですが、果たしてどんな意味でそう呼ばれたのかが気になる限りです。

名称の由来
アイヌ語で「魚の住まない川」を意味する「ヤンケ・ナイ」、または「片割れの川」を意味する「イヤル・キナイ」と言われている。明治時代に、たびたび氾濫した河川を住民が「ヤリキレナイ川」と呼び始めたのが読み方として定着したといわれる。
(Wikipedia 日本語版「ヤリキレナイ川」より引用)

アイヌ語において「川」は「ペッ」または「ナイ」ですから、これは「ヤリキレ・ナイ」と切るのが自然です。厳密には色々と音韻変化もあるそうなのですが、シロートの私にはそこまで追いかけるのは無理なものでして……。

魚の住まない川、というのは本当か?

さて、この Wikipedia の記事による「ヤンケ・ナイ」または「イヤル・キナイ」という地名解ですが、個人的にはどうにも釈然としないものを感じます。まず「ヤンケ」=「魚の住まない」というのにピンと来ません。手元の中川裕・編「アイヌ語千歳方言辞典」(草風館)を見てみても、「魚を捕る」という意味の動詞ではあっても、「魚の住まない」という意味では無さそうです。

「イヤル・キナイ」についてはどうでしょうか。こちらも「アイヌ語千歳方言辞典」を見る限りでは、しっくり来るものは見当たりません。ただ、arke(アラケ)という単語があり、これが「~の片方」という意味になります。従って、i-arke-nai(イ・アルケ・ナイ)で、「その半分の川」といった意味に近づくのかも知れません。

ヤルケナイ?

しかし、アイヌ語でもフランス語と同じようにリエゾンしたりするので、「イ・ア」は「」となります。従って i-arke-nai であれば「ヤルケナイ」と発音されることになり、「ヤリキレナイ」とは微妙に違いがあります。「ヤルケナイ」を、後の世の人(和人)が一種の言葉遊びで「ヤリキレナイ」とした、という考え方も成り立つわけですが、もっと素直に、最初から「ヤリキレナイ」という発音に近かったとしたら……。

実は、アイヌ語には ray(ライ)という動詞があります。「死ぬ」という意味なのですが、先ほどの arke と合わさって arkeray(アラケライ)という動詞ができます。「半身不随」という意味になります。

i-arkeray-nai で、「イ・アラケライ・ナイ」となります。より実際の発音に近いように書き直すと「ヤルケレナイ」となります。随分とヤリキレナイ感じに近づいたのではないでしょうか。

半身不随でヤリキレナイ!

「ヤルケレナイ」ですが、「その半身が不随の川」という意味になります。これは、ペアを組んでいた相手(支流あるいは別流)が涸れてしまった川、とでもなるのでしょうか。アイヌ語の世界では川が擬人化されるのもごくごく当たり前のことなので、こういった解釈も十分成り立つ……のではないかと。

2014/6 追記
これはあくまで机上での思考実験の一つです。この記事を書いた後にもいろいろなアイヌ語地名を見てきましたが、ヒントになりそうな類型地名は未だに見つけられていません。あくまで(可能性の低い)仮説の一つとして捉えていただけますと幸いです。

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