2010年9月9日木曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (7) 「幸福」

 


このシリーズ?もいつまで続くんだろう、と、自分のことでありながら少々心配になってきたのですが、時すでに遅しで(←



幸福(こうふく)

昔々、帯広と広尾の間に「国鉄広尾線」という鉄道路線がありました。この広尾線には「愛国駅」と「幸福駅」があり、愛国駅から幸福駅への切符は「愛の国から幸福へ」というキャッチフレーズでバカ売れした……のだそうです。

「愛の国から幸福へ」ブーム
この駅は一部の旅人に注目されていたが、1973年3月、NHKの紀行番組『新日本紀行』において『幸福への旅 ~帯広~』として紹介されたことから知名度が上昇した。
周りの駅は相次いで幸福駅までの乗車券を増刷し、幸福駅付近の商店も入場券の販売をするようになる。特に幸福駅より二つ帯広駅寄りの愛国駅と併せて、「愛国から幸福ゆき」という切符が一大ブームとなる。1974年にはこれを元にした歌「愛の国から幸福へ」(歌:芹洋子)も登場した。前年には7枚しか売れなかった愛国-幸福間の切符が、この年は300万枚、4年間で1000万枚も売れた。観光客が多数訪れるようになり、待合室の内外に利用者が名刺や使用済みの定期券などを記念に残すようになったのもこのころからである。
(Wikipedia 日本語版「幸福駅」より引用)

大阪万博があったのが 1970 年ですから、ちょうど戦後の高度成長が終わりを告げた頃でしょうか。オイルショックもこの頃の出来事だった筈で、景気の低迷は世相にも暗い影を落としつつあったのかと思います。そんな時代だからこそ「愛の国から幸福へ」という歯の浮くような……あ、いやいや。めるへんちっくななぜ平仮名?)ストーリーが僅か数百円で手に入る、というところに人々は惹かれたのかも知れません。何でも時代背景と結びつけようとするのは良くないですか。そうですか(←

どうする? ナイフル!

では、本題にまいりましょう(!)。

「幸福」は、中札内村から少し下流(北)に進んだところにあります。1957 年に帯広市に編入合併される前は「大正村」に属していました。

沿革
1902年(明治35年)4月1日 - 二級町村制施行、上帯広村(かみおびひろむら)、幸震村(さつない(こうしん)むら)、売買村(うりかりむら - 売買村、迫別(せまりべつ)村、戸蔦(とった)村、鵺抜(ぬえぬんけ)村の4村が合併)の3村が成立。
1915年(大正4年)4月1日 - 上帯広村、幸震村、売買村が合併し、大正村成立。3村名はそのまま大字となる。
(Wikipedia 日本語版「大正村 (北海道)」より引用)

「上帯広村」はさておき、あとはなかなか読めない地名ばかりですが、「幸福」は、「幸震村」にありました。もともとは「幸震」を「さつない」と読ませたそうですが、「読めねー!」ということで、いつしか「こうしん」と音読みするようになったのだそうです。

「幸震」は「サツナイ」で、「札内川」「中札内村」の「サツナイ」と語源を共にする(ちなみに sat-nay で「乾く・川」という意味)のですが、「さち」を「サツ」にしたのはさておき、「震」を「ナイ」と読ませるのはどういうことか、という話です。山田秀三さんは、

日本の古語が地震を「ない」といった処からサッナイにそんな字を当てたのだろうが,他地の人に読めっこない
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.310 より引用)ISBN4-88323-114-3 ※ 強調は引用者による

と記しています。実際「読めっこなかった」わけで、程なく音読みの「コウシン」になってしまったわけですが。

この「幸震」問題?は Web 上でも良く目にするのですが、大抵は「『震』の古語が『ナイ』だから」と書かれています。うちに古語辞典があれば良かったのですが、生憎持ち合わせがナイもので(← ATOK が勝手にこう変換した!)、裏を取れないなぁーと思っていたのですが……。

いろいろとググっているうちに、「日本地震学会」の Web ページに辿り着きました(笑)。なんでも「日本地震学会広報誌『なゐふる』」というものがあるそうなのですが、http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/publications/NAIFURU/naifuru.html には、次のように記されています。

「なゐふる(ナイフル)」は「地震」の古語です。「なゐ」は「大地」、「ふる」は「震動する」の意味です。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/publications/NAIFURU/naifuru.html より引用)

違うじゃーん(笑)。いえ、山田秀三さんの「地震を『ない』といった」という記述は「間違い!」とは言えませんが、「ナイ」=「震」というのは間違い!となるわけですね。「ナイ」=「大地」なのですから。ついでに新党『大地』の議席もナ(ry

というわけで、「震」=「ナイ」という記述を孫引きするのはやめましょう! どうする? ナイフル!

今度こそ本題に

えーと、で、「幸福」の語源ですが(←)。サツナイ村の中でも、福井県からやってきた人たちが多いところだったのだそうで、「幸震」の「」と「福井」の「」を合わせて「幸福」、だそうです。なーむー。

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