2010年10月11日月曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (12) 「上川・愛別・比布・蘭留」

 


はい、サクサクとスピードアップして参りましょう。


上川(かみかわ)

最近では俳優の「上川隆也」が有名ですが、その昔、中日ドラゴンズに上川(誠二)という内野手がいまして……ええ、もちろん何の関係もありません。

「上川」は、アイヌ語の peni-un-kur(川上に・ある・人)の意訳だ、とされますが、山田秀三さんの「北海道の地名」p.101 によれば、「ペニウングル・コタン」(川上の人の・土地)は「上川盆地」の総称であって、「上川町」(上川村)の領域だけを指したものでは無いとのこと。地域名としての「上川」が「ペニウングル・コタン」の意訳として存在して、上川村はそこから名前を拝借した、ということのようです。

まぁ、「どっちゃでもええやん」と言われたらそれまでですが……。

愛別(あいべつ)

ay-pet で「矢・川」と解釈できるため、次のような説があるそうです。

「矢川」については,川の流れが矢のように速いことにちなむ説,石狩川を隔てて石狩アイヌと十勝アイヌが戦った時,相手の矢がとどかず川中に流失したことに起因する説などがある(愛別町史)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.30 より引用)

みんなの人気者「十勝アイヌ」がまた出てきました。しかも今回も戦をしています。どれだけ好戦的なんだ……と思わせますね(笑)。北海道のアイヌは、決して中央集権的な政体を形成することは無かったようなのですが、中でも十勝・釧路・根室のアイヌとそれ以外のアイヌの間には、気質や文化に「ちょっとした断絶のようなもの」があったように思えます[要出典]。地方によって「ナイ」が多かったり少なかったりするのも、案外似たような所に理由があるのかも知れません。

さてわたくし、こういった「面白おかしい話」が出てきたときは、多少疑ってかかるようになってしまっているのですが、この ay-pet についても、実は「矢川」ではなく「(エゾ)イラクサ・川」じゃないの? という説もあるそうです。

「北海道駅名の起源」(昭和 48 年版)なんかは、なかなか面白い記述になっています。ちょっと長いですが引用してみましょう。

起 源 アイヌ語の「アイ・ペッ」(イラクサのある川)から出たものであるが、「アイ」や(弓の矢)とも訳されるところから矢の川とも訳され、矢のように流れが早いからだといわれ、またむかし十勝アイヌの酋長がこの地方を攻撃して敗れ、矢にあたってがけから川に転落し、矢を流した川であるという伝説もある。
(日本国有鉄道北海道総局「北海道駅名の起源」昭和 48 年版 p.208-209 より引用)

出たものであるが」と断定しておきながら、「──という伝説もある」と締めるあたりに稚気を感じるというか、「こんな面白い話もあるんですよ」というサービス精神が見え隠れするようですね。もともとは誰かの創作だったとしても、後世に伝わっているという時点で新たな物語が誕生する……なんかそんな感じもしてきます。まぁ、その結果として、もともとの由来が伝承されなくなるケースも少なくないので痛し痒しではあるんですが……。

比布(ぴっぷ)

エレキバンで有名な街ですが(いつの時代ですか)、永田方正「北海道蝦夷語地名解」(p.46)では、Pip or pipi として「石多キ處 箱ノ如キ川ニシテ石多シ」とされています。ただ、近世(江戸後期)の資料では「ヒフ」と記されているということもあり、「Pipi の転訛である」という説のほかに、pi-o-p(石・多い・もの)説もあるようです。いずれにしても「石の多いところ」という意味で間違いなさそうです。

そういえば「磁石」という言葉にも「石」がつきますよね(←

蘭留(らんる)

思わず「らんらんるー♪」と口を突きそうになる(なりません)地名ですが、ran-ru で「下がる・道」という意味なのだそうです。おお、サクサクと進み始めた!

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