2010年10月24日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (18) 「野寒布岬・抜海・稚咲内」

 


さて、アルペンスキーも開幕しそうな今日この頃ですが、懲りずにアイヌ語地名の話を進めます。今日からは Day 4 で見かけた地名の数々をご紹介します。


今回は、予めたくさんの地名を地図にプロットしてみました。前回、マメにやったのが意外と面倒だったもんで……。

野寒布岬(のしゃっぷみさき)

未だに「納沙布岬」(ノサップ)と「野寒布岬」(ノシャップ)を取り違えてしまう時があるのですが、「納沙布」は根室のほうで、「野寒布」が稚内のほうです。「寒い」(しゃむい)方が稚内だ、と覚えておけばいいかも知れません。

「ノ」は not(ノッ)で、もともとは「アゴ」という意味であるものが、転じて「」という意味にも取られるようになったとされます。山の稜線がそのまま海に落ち込むのを「アゴ」に見立てた、ということですね。いわば造りかけのモアイが横たわっているような感じでしょうか。

北海道では、ほかに「ノ」で始まる岬は「能取岬」くらいのものかと思いますが、面白いことに日本国内には「野母崎」「野間岬」「野底岬」「野島崎」などがあります。これらが果たして関連性があるのか無いのか……。

「シャッポ」はフランス語

本題に戻って「野寒布岬」について、です。「ノ」は not で決まりのようですが、「シャップ」が諸本で微妙に違いがあるようです。角川日本地名大辞典には、次のようにあります。

地名の由来には,アイヌ語のノッシャム(崎の際の意)による説(蝦夷地名考并里程記),ノツヱト(岩鼻の意)による説(再航蝦夷日誌),ノッシャプ(岬の顎の意)による説(北海道蝦夷語地名解)などがある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1133 より引用)

思いっきり孫引きですが、その辺は笑って見過ごしていただければと思います。さて、これらの説をアルファベットに直すと not-sam 説、not-etu 説、not-sap(a) 説、となるでしょうか。山田秀三さんは not-sam 説が妥当ではないかと考えていたようで、「野寒布」は「岬の・側」という意味ではないか、としています。つまり「野寒布岬」は一種の循環参照だということになりそうです。

抜海(ばっかい)

逆から読めば「海抜」ですが、それはどうでもいいですね。この日本離れした力強い音が密かにお気に入りだったりします。お酒も強そうですし(←

抜海ですが、今のところ「日本最北の無人駅」なのだそうで、一時はそのことで有名になったのだそうです。肝心の意味ですが pakkay-suma(パㇰカィ・スマ)で「子を負う・岩」、あるいは pakkay-pe(パㇰカィ・ペ)で「子を負う・もの」とのこと。名詞か指示代名詞かの違いはありますが、少なくとも pakkay であることには違いは無さそうですね。


稚咲内(わっかさくない・わっかさかない)

読めそうで読めない地名なんですが、山田秀三さんの「北海道の地名」(草風館)には「わっかさくない」と「わっかさかない」の双方が併記されていました。角川地名大辞典には「わっかさかないかいがん」(稚咲内海岸)とありますが、Wikipedia の「北海道道444号稚咲内豊富停車場線」には「わかさかない」とあります。さーて来週の……じゃなくて正解は?

幸いにして、アイヌ語での地名解はすっきりはっきりしていまして、wakka-sak-nay(ワッカ・サㇰ・ナイ)で「飲み水が・ない・川」とのこと。「北海道の地名」p.136 には「行ってみると川が流れているが,鉄錆色のやち水で,これでは飲めたものではない」とあります。hure-nay (赤い・川)だったのでしょうが、このあたりでは清冽な水の確保が大変だったのか、「飲めない川」という呼ばれ方になった、ということみたいですね。字面が悪くないのも、逆におかしさを誘います。

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