2011年1月9日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (31) 「支寒内・風不死岳・モラップ」

 


はい、今日も支笏湖周辺の濃い地名の話題です。張り切っていきますよー。


支寒内(ししゃもない)

「角川日本地名大辞典」には「しさむない」とあるのですが、地図や現地の標識を見ると「ししゃもない」とあります。


どっちが正しいか……を考える前に、意味を考えてみましょう。「支寒」は、「隣人」(→「和人」)を意味する si-sam だと見て間違い無いでしょう。となると si-sam-nay か、あるいは si-sam-o-nay のどちらか、となります。

si-sam-nay の「和人・沢」というのは、ありえない形ではないと思いますが、ちょっと唐突な感じがします。一方、si-sam-o-nay で「和人・が(複数)いる・沢」と解釈するのは極めて自然です。この手の oma(単数)だったり o(複数)は略されることも多かったようですが(無くてもそれなりに意味が通じますからね)、「支寒内」では「ししゃもない」という古い読み方が残っていた、ということのようです。うーん、ロマンですなぁ~(←

風不死岳(ふっぷしだけ)

支笏湖のカルデラを形成する山のひとつで、支笏湖の南岸にそびえ立つ標高 1102 m の山です。山田秀三さんも「北海道の地名」にて記しているように、松浦武四郎の「東西蝦夷山川地理取調圖」には「フクシノホリ」として記載されています。このことから hup-us-i-nupuri で「トド松・が群生する・所・山」だと考えられます。

……支寒内もそうですが、とても綺麗な形でアイヌ語地名が残っていますね。支笏カルデラを南に超えると白老ですし、東に抜けると千歳です。このあたりは名だたるアイヌのコタン(集落)だったところなので、伝承も比較的正確に行われていたのかも知れません。

モラップ(もらっぷ)

……ルビ、いらないか(笑)。ここは「モラップ」だったり「モーラップ」だったりするのですが、山田秀三さんの「北海道の地名」における説明文が味のある名文になっているので、一部引用してご紹介しましょう。

モラップ
 支笏湖東南隅の入江の浜がモラップと呼ばれて青少年の行楽地。その北側,湖畔市街との間にピシュン(浜側の)・モラㇷ゚,キムン(山側の)・モラㇷ゚というたんこぶ山が対になって並んでいる。この浜側は海の方の意であろう。永田地名解は「モラㇷ゚ mo-rap。翼岬。二岬あり,沼中に斗入し,あたかも両翼を張るが如し。故に名く」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.58 より引用)

「青少年の行楽地」という表現が気に入ってしまいました(笑)。実際に現地に行かれた方はお気づきになるかもしれませんが、この「モラップ」、ちょっと変な地形なんです。


国道 276 号線や支笏湖通などは、ごくごく平坦な原野を進みます。ところが、「モラップ山」は湖のほとりに「ぽっこり」と聳えているのですね。そうですね、雰囲気は「昭和新山」に似ているかも知れません。平地だったところが突然こんもりと盛り上がった……そんな感じがあります。特徴のある地形です。

翼岬??


山田さんの文章を続けましょう。

 実はこの解には閉口していた。mo は「小さい」,あるいは「静かな」という意。二つの並んだ山を小さい翼と呼んだのだろうか。あるいは入江の浜の両側を翼に見立てたのでもあろうか。
 rap には tapkop(たんこぶ山)と同じ意味もあったという(地名アイヌ語小辞典)。二つの小山の名が mo-rap(小さい・たんこぶ山)だったのだろうか。また rap は ran(下る)の複数形でもあった。そして ran は坂の意にも使われた。この浜に下る坂をモ・ラㇷ゚(小さい・坂)と呼んだのかもしれない。要するにこの地名も分からなくなった名なのであった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.58 より引用)

地形から素直に呼んでみると、「小さい・たんこぶ山」という解釈が至極妥当に思えます。無理矢理漢字を当てずにカタカナで残っているのが、雰囲気が出ていていいんじゃないかなぁ、などと思いました。

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