2011年4月10日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (41) 「赤平・芦別・シューパロ・夕張」

 


本日も引き続き、すっきりしない地名の数々をご紹介します(←



赤平(あかびら)

hure-pira(赤い・崖)を半分だけ意訳して「あかびら」になった……とされることが多いのですが、異説もあるみたいです。「角川──」(略しすぎ)から引用してみましょう。

地名は,アイヌ語のアカピラ(山稜の崖の意)に由来するという(赤平八十年史)。また,空知川崖が赤いことからアイヌ語でフレピラ(赤い崖の意)と呼び,フレを赤と訳し,ピラは平の字をあてたともいう(北海道地名誌)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.41 より引用)

なるほど。ちなみに、山田秀三さんも「フレピラ」説には疑問を投げかけていました。

従来赤平はフレ・ピラ(赤い・崖)の半訳地名だと書かれて来たが,赤平市に長い田中吉人氏の著書によれば古くからアカピラであったという。氏は明治 21 年の道庁版原野区画図では,今の滝川公園の沼の崖がアカピラと書かれている。また同年入植した人が,後に土地払下願いを出した時には「赤掌」と書いた等の根拠を挙げられた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.66 より引用)

というわけで、もともと「アカピラ」だった可能性が高そうですね。だとすると aka-pira で「山稜・崖」なんですが、今ひとつしっくり来ません。どこかで何かが抜け落ちているような感じがします……。

芦別(あしべつ)

永田方正翁は as-pet で「立つ・川」であると記したようですが、「北海道駅名の起源」では hasi-pet で「灌木・川」ではないかとしています。こちらも「角川──」さんのご意見を伺ってみましょう。

地名は,アイヌ語のアシュペッ(切り立つ川の意),あるいはハシュペッ(灌木の中を流れる川の意)に由来するという(アイヌ語地名の研究)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.64 より引用)

「アシュ」「ハシュ」というのは、永田方正翁の有名な悪癖に起因するもので、本来は「アㇱ」「ハㇱ」と表記されるべきもの、です。ここも意外と解釈がはっきりとしない地名のようですね。

シューパロ湖(しゅーぱろこ)

現在、夕張川の本流を堰き止める形で「シューパロダム」が建設されているところですが、si-"yuparo" で「本流の・夕張(川)」といった意味です。アイヌ語地名では si- で始まるものも少なくないのですが、意味は「本」なのに音感から「支」の字を当てられてしまうことも少なくなく、まるで「支流」のような印象を受けてしまいます。これには困ったものですね。

夕張(ゆうばり)

もともとは「ユーパロ」だったとされますが、その解釈は意外なほどバラエティ豊かです。古くからの大地名にはありがちな話ですが……。今回も例によって「角川──」から引用してみます。

古くはユフハリ・ユーパロともいい,遊張・勇張・勇威などともかいた。空知地方南東部,石狩川支流夕張川流域。東部に夕張山地が広がる。地名の由来には,アイヌ語のユーパロ(温泉口の意)による説(北海道蝦夷語地名解),イパロ(それの口の意)により,かつて文化的中心地であった千歳に往来する東の口であったことにちなむ説(北海道駅名の起源),ユーバリ(硫黄臭があるの意)により,大雨の時硫黄により白く濁ったことにちなむ説(再航蝦夷日誌)などがある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1572 より引用)

いやー、メジャーどころ(?)で悉く意見が分かれていますねぇ。永田方正翁の yu-paro (「湯の・口」)がもっとも分かりやすいのですが、夕張川流域には有用な温泉地が見当たらないというところに引っかかりを感じる人が多いようです。鉱泉は存在するらしいのですが……。

i-par (「それの・口」)というのは……。断言的に否定はできないのですが、もう少し具体的に川筋の特徴を示す地名があってもいいんじゃないかなぁ、と。i というのは「指示代名詞」なので、公知である「何か」を指し示している筈なのですが、時は移ろい「何か」が具体的に何を指すのかが分からなくなってしまってさぁ大変、という話になってしまいます。

「硫黄臭がある」というのは面白い解釈なのですが、アイヌ語にはどう落としたら良いものか……。iwau-hura-at だと「イワフラッ」になっちゃいますね。iwau-hura-o か、あるいは指示代名詞「i」を使って i-hura-o あたりにすれば、何となくそれっぽくはなりますね。想像するに、随分と昔から「ユーパロ」という地名が一人歩きして、その意味するところは意外と早く忘れ去られてしまった、といったところかも知れません。

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