2012年3月25日日曜日

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イザベラ・バード「日本奥地紀行」を読む(第21回)

 


今日も引き続き、イザベラさんちの面接模様を見ていきましょう(手を抜いてみた)。

召使を雇う(続)

というわけで、通訳兼召使いを求人中のイザベラさん、「日本のダンディ」は願い下げでしたが、有力候補はあと二人残っています。

 次はたいそうりっぱな顔つきの男で、年齢は三十一歳、良い和服を着ていた。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

「良い和服を着ていた」という時点でイザベラさん的にはポイントアップしたのでは、と思わせますね。さてさて……

彼はしっかりした推薦状をもっており、彼の話す英語は、初めのうちは期待がもてた。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

ふむふむ。「初めのうちは」期待がもてた……ですか。ということは……

しかし彼は、金持ちの英国人の官吏に仕えて料理人をやっていたが、この英国人は、大勢のお伴を連れて旅行し、旅先には前もって召使いを派遣して準備をさせていた。彼は、実際には英語をほんの少ししか知らなかった。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

なるほど。彼は腕の立つ「料理人」ではあったけれども、召使いでは無く、通訳としての力量もびみょうだったのですね。まぁ、ありがちな勘違いだったのでしょうが、幸いなことに、

私の旅には男主人(マスター)がいないこと、女中もいないだろうと聞いて、彼は非常にびっくりし、彼が私を断ったのか私が彼を断ったのか分からぬほどであった。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

というわけで、「求人のミスマッチ」にお互い気がついたみたいです。まったくなによりですね。

次に登場するのが……

 三番目はウィルキンソン氏がよこした男で、質素な和服を着ており、率直で知的な顔をしていた。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

「質素な和服」を着ていて「率直で知的」な顔をしていたというのは、ともすれば上から目線になりがちな(←)イザベラさんにしては、かなりポイントの高い描写であるように思えます。

ヘボン博士が日本語で彼と話したが、彼は他の連中よりも英語を知っていると信じており、「こんなにあがらなければ、知っていることも口から出るのだが」と語っていた。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

ここは少々解釈が分かれるところですね。彼は知的で有能である反面、やや自信家のきらいがあったのかも知れません。何事にも控えめなところがある日本人としては珍しいタイプでしょうか。

明らかに彼は私の言うことを理解しており、「後で彼が男主人(マスター)になってしまうのではないか」という懸念はあったが、非常に好感のもてる気がしたので、もう少しで彼を雇うところであった。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

少なくとも、語学力についてはイザベラも認めていたようですね。ただ、あまりに才気盛んであるが故に「召使い」とするにはちょっとリスクがあるかも? と考えたようです。

他の連中は、一人として語る値打ちはない。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

このバッサリ感、さすがはイザベラ姐さんですね(笑)。

伊藤の第一印象

というわけで、イザベラによる三人の「有力候補」評を見てきたわけですが、最後の才気あふれる男が最有力であるように見えました。しかしながら、「もう少しで彼を雇うところであった」とある通り、彼もイザベラに「通訳兼召使い」として雇われることは無かったのでした。そして、この閉塞した状況の中……

 しかしながら、私が彼に決めかけていたとき、ヘボン博士の召使いの一人と知り合いだという、なんの推薦状も持たない男がやってきた。
(イザベラ・バード/高梨謙吉訳「日本奥地紀行」平凡社 p.46 より引用)

「なんの推薦状も持たない男」の登場です。ようやくフラグが立った感じですね!(←) そう、この怪しげな男こそ、後に「通訳の名人」「通弁の元勲」などとも賞賛された(本当かな?)、若き日の「伊藤鶴吉」少年だったのでした。


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