2012年7月28日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (61) 「篠津・蕨岱・当別」

 


約 4 ヶ月ぶりのご無沙汰でございます……(仕事が忙しかったものですいません)。



篠津(しのつ)

札幌近郊の方はよーくご存じでしょうが、そうでない方には「それってどこ?」と言われそうな、全国的にはマイナーな地名……ですね。もともとは篠津村という独立した市町村だったのですが、昭和 10 年に江別市に吸収(合併?)されています。今ではお隣の「新篠津村」のほうが有名かもしれませんね。

さて、その「篠津」の由来について、いつもの「角川──」(略しすぎ)を見てみましょう。

地名は,アイヌ語のシンノッ(山崎の意)に由来(北海道蝦夷語地名解)。松浦武四郎「再航蝦夷日誌」に「スノツ,左りの方の枝川也。此処元番屋有しと云り。其跡今顕然たり」,同「廻浦日記」に「シノツ,川巾五六間,遅流にして深し。左りの方に有今の番屋は此処に有しと聞り。如何なる故なるか,変化の者多く出しより今の処え引よし也。川源はシヘツとトフヘツの川の間に有りて少しの山有。是より来るよし也」と見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.654 より引用)

うぅーむ。なんだかすっきりしません。斯界の碩学・山田秀三さんの「北海道の地名」にも「篠津」のエントリが無いので、うーどうしたものか。永田方正翁の「山崎」説は sin-not で、直訳すると「大地・顎」(sinsir の音韻変化)となります。これは海または平野部に突き出した山脈の終わり、といった意味ですね(日本語が難しい……)。

ただ、現在の「篠津」は、石狩川によって形成された沖積平野で、どう考えても山脈などは見当たりません。sin-not に相当する山は当別のあたりにしか無いので、もしかしたら sin-not はもともと当別のあたりを指す地名で、「変化の者」が多く出た云々で今の場所まで地名が移動してきた、といった話になるのかも知れませんね。

あ、「廻浦日記」に書いてあるのはそういうことか(←

蕨岱(わらびたい)

なんかもしかしたらアイヌ語地名じゃ無いかもなぁ……と思いながらも調べてみると……。ふむふむ、道内に「蕨岱」という地名は長万部と当別の二ヶ所にあるみたいですね。ちょっと邪道ですが、まずは長万部のほうから。

地名は,アイヌ語のワルンベフル(蕨坂の意)に由来する(北海道蝦夷語地名解)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1650 より引用)

warumpe-hur で「蕨・丘」と言った意味でしょうか。もっとも warumpe などというアイヌ語は、実は確認できていません。山田秀三さんも「北海道の地名」で言及していますが、おそらく「ワルンベ」は日本語からの借用語だったのだと思います(「コンブ」と同じく)。

で、今回の対象である当別町の「蕨岱」の由来ですが……

泥炭地で野火が多く,焼跡に蕨がよく繁茂したのが,地名の由来である。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1650 より引用)

実にあっさりとしたものです。というわけで、これは「非アイヌ語地名」と捉えてしまって良さそうですね。ちなみに「蕨岱」は「角川──」の全 1651 ページの中で、最後から 2 ページ目に掲載されています。最後の最後、ですね。

当別(とうべつ)

しばらくサボっていたのがいけないのですが、久々にリハビリかねて書き始めてみたところ、いきなり難題続きでどーしたものかと……。次こそシンプルに行きたいものですね。はい、札沼線(学園都市線)の「石狩当別駅」がある当別町です。

今回は、山田秀三さんの「北海道の地名」から。

 石狩川下流北岸の川名,町名。明治 4 年仙台の支藩岩出山藩主伊達邦直が家臣を率いて移住開拓した処である。永田地名解は「トー・ペッ。沼・川。旧名チワㇱペト。早川」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.38 より引用)

いやー、やっぱり地名解はこれくらいシンプルで無いといけませんよね。というわけで続きを……

 行って見たが然るべき沼が見えない。当別市街から 17 キロばかり上の東側に沼の沢があり,その上に小さな古沼があっただけである。処がふと松浦図を開いて見たら,当別川下流の西側(今の石狩太美駅の近くらしい)に,昔は沼が並んでいたのだった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.38 より引用)

うー、さすがは山田さん。この辺の検証はぬかりないですね。というわけで「当別」は to-pet で「沼・川」と解釈してしまって、これはまず間違いないでしょう!

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