2012年7月29日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (62) 「知来乙・札比内・晩生内」

 


昨日は難しいものが多かったので、今日はわかりやすいアイヌ語地名を集めてみました。いや、集めてみたつもりだったのですが……。



知来乙(ちらいおつ)

月形町の西のほうにある地名で、札沼線(学園都市線)の駅もあります(知来乙駅)。これは実にわかりやすいアイヌ語地名なのですが、念のため「角川──」を見てみましょうか。

地名は,アイヌ語のチライ・オッ(イトウ魚・群来するの意)に由来する(地名アイヌ語小辞典)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.887 より引用)

はい。chiray-ot で「イトウ魚・群来する」という意味です。知里さんの「──小辞典」では chiray-ot-nay で「チらヨッナィ」という例を示しているのですが、ここでは「チライオツ」となっているのが少々不思議です。一般的にアイヌ語地名ではリエゾンすることが多いので、chiray-ot であれば「チラヨッ」となりそうな感じがするので……。

ちなみに、石狩川を挟んだ向かい側には「江部乙」という地名もあります。

札比内(さっぴない)

月形刑務所を過ぎて、月形町の東の方にある地名です。同じく札沼線(学園都市線)の駅がありますね(札比内駅)。こちらも「角川──」を見てみましょう。

地名は,アイヌ語のサッ・ピ・ナイ(乾く・石の・川の意)に由来し,渇水期になると水が砂利の中に吸い込まれてしまう川であったことにちなむ(アイヌ語地名の研究1)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.887 より引用)

ふむふむ。ここでは山田秀三さんの著作から引用していますね。せっかくなので別のソースからも。

アイヌ語の「サッ・ピ・ナイ」(かれた細い沢)から出たもので、現在の札比内川を指したものである。
☆このあたりからメロンの産地。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.53 より引用)

同じ解釈のようですね。むしろ補足情報の方が重要かも知れません(笑)。

えーと、「札比内」は sat-pi-nay で「乾いた・小石・小川」と解釈して間違いなさそうです。

晩生内(おそきない)

最初っからルビを付記しているのでバレバレなのですが、意外と難読地名なのかな? と思ったりもします。今回は、山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょうか。

 浦臼町内の地名,川名(石狩川支流)。駅あり。この名の意味ははっきりしない。永田地名解は「オ・ショキ・ナイ。川尻の高崖出たる処」と書いたが,ショキは sotki (寝台)とでも読んだのだろうか。たぶんアイヌ古老の説だったのであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.48 より引用)

sotki は山田さんの言うとおり「寝台」あるいは「寝床」という意味なので、どこから「高崖」が出てくるのかがちと理解に苦しみますね。続きを見てみると……

北海道駅名の起源は昭和 25 年版から「オ・ショシケ・ナイ(川尻が崩れている谷川)から転訛した」と説をたてた。o-soshke-nai(川尻・剥げている・川)と読んだ巧い考えかたである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.48 より引用)

うーん。私案も考えたのですが、現実の地形と照らし合わせてみると o-soske-nay で「川尻・剥げている・川」のほうが適切なのかも知れませんねぇ。soske の真ん中の s は閉音節なので、閉音節という概念を持たない日本人が略してしまった、と考えれば納得できそうな気もします。

あ、書こうかどうか迷ったのですが、私案は o-so-(usi)-kot-nay で「川尻に・滝・窪んだ・川」というものです。地形図で見たところでは、ちょっと窪んだところにある川のように見えたので……。もっとも、川尻に滝が無いとどうしようも無いのですが。

それにしても、改めて考えてみると、「おそき」に「晩生」という字を当てたのはセンスがあるなぁ、と思います。難読になってしまったけれど……。

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