2012年8月18日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (67) 「牛朱別・宇園別・当麻」

 


旭川の北東に位置するアイヌ語地名を取りそろえて見ました。難しいもの、簡単なもの、ちょー簡単なものの三本立てです(順不同)。



牛朱別(うししゅべつ)

国道 39 号(大雪国道)は、永山のあたりで「牛朱別大橋」という橋で川を越えています。ところが、その川の名前は「永山新川」というらしく、どこから「牛朱別」という名前が出てきたのか……と思っていたところ、より旭川市内に近いところを流れている川の名前が「牛朱別川」でした。どうやら「新川」というだけあって、上流部で石狩川にバイパスする川を作ってしまって、その川にかかる橋の名前に「牛朱別」の名前を拝借した……ということのようです。

さて、その前提を踏まえて「牛朱別川」の地名解です。今回は「北海道の地名」から。

 旭川市街の北部で石狩川に入っている大支流の名。永田地名解は「ウシㇱ・ペッ ushish-pet。蹄川。鹿跡多き川。上川某アイヌ云ふ。イシシュペッにて雪水多く下り陸に氾濫するを以て名くと」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.99 より引用)

ふむふむ。確かに usis(i) は「蹄」という意味があるので、usis-un-pet で「蹄・ある・川」という解釈が成り立ちます。一方で、永田地名解にて「上川某アイヌ云う」として記されている「イシシュペッ」については……良く解りません。萱野さんの辞書を見ると isis で「それ」と訳されているケースがありますので、isis-un-pet で「それ・ある・川」となりそうです。

面白いことに、アイヌの世界でも「言挙げを憚る」ケースがあるようで、例えば「熊」であることが自明であるのに「それ」と言い換える場合があります。この isis に云う「それ」も、もしかしたら似たようなもの……なのでしょうか。いずれにせよ、「イシシュペッにて雪水多く下り陸に氾濫する」というのは、私の知る限りではアイヌ語の直訳では無さそうな感じです。

宇園別(うえんべつ)

永山から少し北東に進んだところの地名で、当麻(とうま)町に入ったところの地名です。これは道内各所にある wen-pet に他ならないのですが、「宇園別」という字が当てられているのはここだけなので、珍しいかなと思って採り上げてみました。

他には「宇遠別」や「雨煙別」、「植別」などがありますね。「宇園別」はマイナー過ぎるからか、山田秀三さんの「北海道の地名」でも採り上げられていません。

意味は wen-pet で「悪い・川」です。何がどう悪いのかは、いつも通り不明です。

当麻(とうま)

石北本線には「当麻駅」という駅があります。今回は「角川──」(──)を見てみましょう。

上川地方中央部,石狩川上流左岸。地内に同川支流牛朱別川・当麻川・石渡川などが流れる。地名は,アイヌ語のトーオマナイ(沼に行く川)にちなみ,これがトーマナイとなった(アイヌ語地名解)。江戸期の松浦武四郎「丁巳日誌」によれば,ウシヽベツ(牛朱別川)の支流としてトウマと見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.935 より引用)

なるほど。これは迷う余地は無さそうですね。to-oma-nay で「沼・入る・川」と見て良さそうです。

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