2012年8月19日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (68) 「伊香牛・安足間・茅刈別」

 


えー、本日もちょいとマニアックなアイヌ語地名をご用意しました。久々に「ソース無し」の回もあります。



伊香牛(いかうし)

滋賀県大津市には「伊香立」という地名があるのですが、「伊香牛」は北海道は上川郡当麻町にある地名です。今回は「北海道駅名の起源」を見てみましょうか。

アイヌ語の「イカウシ」、すなわち「イカ・ウㇱ・イ」(いつもあふれる所)と解される。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.208 より引用)

ふむふむ。ika-us-i だというのですが、なんかちょっと物足りないですね……。「北海道の地名」を見てみましょうか。

永田地名解は「イイカウシ。越す処」と書き,旭川市史の解(知里博士筆)も「イ・イカ・ウシ i-ika-ush-i それを・越え・つけている・所」と書いた。アイヌ時代からの渡河点であったからの名であろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.100 より引用)

なるほど。i-ika-us-i で「それ・越える・いつもする・所」ですね。これであれば納得です。

安足間(あんたろま)

昔、ジョスラン・アングロマというサッカー選手がいましたが……(全くもってどうでもいい)。石北本線に「安足間駅」があります。

ではまず、「角川──」(略──)を見てみましょうか。

……。これはどうしたことでしょう。安足間駅は大正12年11月15日、石北本線の開通と同時に設置された歴史のある駅なのに……。どういうわけか記載が漏れてしまっているようです。

仕方が無いので、「北海道の地名」を見てみましょう。

 旭川市史の解(知里博士筆)は「アンタロマプ(antar-oma-p 淵・ある・もの)。或はアン・タオㇽ・オマ・ㇷ゚←ar-taor-oma-p(片側・高岸・ある・者)か」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.101 より引用)

ふむふむ。antar-oma-p はとってもしっくりきますが、ar-taor-oma-p はちょっと耳慣れない感じがしますね。ん、あれ……? 他ならぬ知里さんの「──小辞典」を見てみたところ、ちょっとおかしな記述を見つけました。

ar- アㇽ 対をなして存在する(と考えられる)ものの一方をさす; 一方の; もう一方の; 他方の; 片方の; 片割れの。── n や r の前では an- になり,t や ch の前では at- になる。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.7 より引用)

おおっと。「t や ch の前では at- になる」とハッキリと書かれていますね。ということは、ar-taor-oma-pat-taor-oma-p でないとおかしい、となります。

とすると、やっぱり antar-oma-p で「淵・ある・もの」と見るのが自然かもしれませんね。

茅刈別(ちかるべつ)

旭川紋別自動車道の橋には「チカリベツ橋」と書かれていたのですが、国土地理院の地形図を「ウォッちず」で確認したところでは、「茅刈別川」で「ちかるべつ」とルビが振られています。


えー、今回は手元にソースが無いので、「──小辞典」を片手に地図とにらめっこしながら解を考えるしかありません。この「茅刈別川」はずいぶんと流域の広い川で、水源は遠軽町との境に位置する「比麻良山」あるいはその近くの「ニセイカウシュッペ山」のあたりまで遡ります。また、その支流は「茅刈別第二支川」「茅刈別第三支川」「茅刈別第四支川」とあるのですが、「──第三支川」「──第四支川」がまっすぐ「ニセイカウシュッペ山」に向かっているのに対して、本流は「芦の台」という台地状の尾根を迂回する形となっています。

また、「芦の台」から北に向かうと、「茅刈別川」の本流を越えた先に「奔然別」という「山」があります(「──山」でも「──岳」でもない、変わった名前の山ですね)。「然別」と言えば、十勝のほうに「シカリベツ」と読む地名がありますね。ん、そういえば「チカルベツ」と「シカリベツ」って似てますよね……。

「然別」は、si-kari-pet で「自分・を回す・川」だという説があります。この「チカルベツ」も「芦の台」を迂回して「ニセイカウシュッペ山」に向かっています。そう考えると「茅刈別」も si-kar-pet で「自分・回す・川」と考えてもいいのかも知れません。

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