2012年8月25日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (69) 「トイマルクシュベツ川・チトカニウシ山・スプリコヤンベツ川・白滝」

 

第 69 回を記念して(なんでだ)、超スーパーマニアックな地名を揃えてみました(最後にはお口直しもご用意しています)。それではどうぞ!

トイマルクシュベツ川

tuyma-ru-kus-pet?
遠い・路・通っている・川
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
上川町の、以前にご紹介した「茅刈別川」の隣を流れている川の名前です。
「トイマルクシュベツ」という文字を見た時に、「これは絶対『トイマクルシュベツ』の間違いだろう」と思ったのですが、どうやらそうでも無かったようで……。山田秀三さんの「北海道の地名」に記載がありました。

 留辺志部川上流の南支流の名。北見境の山から出て国鉄中越駅の対岸で本流に入る。トゥイマ・ルペㇱペ(tuima-rupeshpe 遠い・峠道沢)と読まれる。少し遠いが山越えの峠道でもあったのだろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.102 より引用)
「トゥイマ」という単語をあまり目にすることが無かったのですが、確かに萱野さんの辞書にも tuyma で「遠い」とあります。そして、実際の地形も、トイマルクシュベツ川を遡っていって峠を越えると、支湧別川の源流部に辿り着くことができます。そして、このルートは北見峠と比べて遠回りです。

山田さんは「ルクシュベツ」を「ルペㇱペ」と解釈されていますが、これは ru-kus-i(路・通っている・所)と取るべきかもしれません。ということで、tuyma-ru-kus-i-pet で「遠い・路・通っている・所・川」でしょうか。

チトカニウシ山

chi-tukan-ni-us-i
我ら・射る・木・ある・所
(典拠あり、類型あり)
グルメにはチト堪らない名前の山ですが……(←)。なかなか面白い由来の地名なのですが、実は道内各所にあるらしいです。こちらも「北海道の地名」から。

 上川町と,北見の滝上町,白滝村の境になっている高山の名。チトゥカン(chi-tukan 我ら・射る)という言葉が地名に出て来るのは,狩猟等でそこを通る時に,特定の目標に矢を射って武運を占った処である。この地名の形から見るとチトゥカンニウシ(chi-tukan-ni-ush-i 我ら・射る・木・がある・処)つまり,そこを通る人たちが矢を放って運を占った大木があった処の名で,それがこの山の名となったのであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.103 より引用)
お見事です。これは異論を出しようもないですね。chi-tukan-ni-us-i で「我ら・射る・木・ある・所」でしょう。ちなみに引用文の中で「上川町と,北見の滝上町,白滝村の境になっている」とありますが、地図を見た限りでは滝上町とは接していないようです。

スプリコヤンベツ川

2022/3/26 の記事をご覧ください。

たまたま地図を眺めていて見つけたのでご紹介します(本邦初公開……かな?)。遠軽町(旧白滝村)を流れる湧別川の支流の「熊ノ沢川」の、更に支流にあたります。長さは 1 km ほどの短い川です。当然ながらソースはありません。

えーと、これは多分 supor-koy-an-pet で「激しい早瀬・波・ある・川」ということでしょう。なにしろたった 1 km で 100 m の標高をすべり落ちているのですから、かなりの急流であることは間違いなさそうです。

白滝(しらたき)

poro-so
大きな・滝
(典拠あり、類型あり)
つい「しらたき」と「マロニー」の違いを調べたりしてしまいましたが、それはさておき……。北見峠を越えて、遠軽町に入ったところです。かつては「白滝村」という村がありました。

由来について、「角川──」(略──)を見てみましょう。

網走地方中央南部,湧別川上流,および同川支流の支湧別川流域の山間に位置する。現字下白滝の湧別川に滝があり,白滝と称されていたことから,明治36年植民地設定の際白滝植民地となった。文政年間の間宮林蔵の蝦夷図には「ショー」(滝),安政5年の松浦武四郎「戊午日誌」には「ポロソウ」(大滝)の記述がある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.724 より引用)
ということなので、この「白滝」は「非アイヌ語地名」と言うよりは、「アイヌ語意訳地名」と見るべきかもしれませんね。

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