2012年9月29日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (75) 「トサモシベ・仁伏・弟子屈」

 


はい。本日は屈斜路湖周りの不思議な?地名をいちぶ紹介します。



トサモシベ

屈斜路湖のまわりの山々には変わった名前のものが多く、たとえば「サマッカリヌプリ」「コトニヌプリ」「サマッケヌプリ」「イクルシベ山」「アトサヌプリ」「マクワンチサップ」「サワンチサップ」「ニタトルシュケ山」など、枚挙に暇がありません。これを全部追っかけていても大変なので、もっとも屈斜路湖に近くて意味不明っぽい「トサモシベ」を見てみましょうか。今日も山田秀三さんの「北海道の地名」から。

 この山(376 メートル)は湖の東岸に張り出している唯一の山なので目立つ。松浦図ではトサムシヘと書かれた。ゆっくりいえばト・サㇺ・ウㇱ・ペ「to-sam-ush-pe 湖の・傍・にいる・者(山)」であった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.275 より引用)

いやー、単純かつ明快な答で素晴らしいですね。to-sam-us-pe で「湖・傍・ある・者」と見て間違いないでしょう。

仁伏(にぶし)

出汁を取るのに使う……(それは煮干)ではなくて、スペインのフラメンコギターの……(ry

……気を取り直して。「仁伏」について、「角川──」(略──)を見てみましょう。

〔近代〕昭和22~36年の弟子屈(てしかが)町の行政字名。もとは弟子屈村大字屈斜路(くつしやろ)村の一部。サクンチサップとも通称された。地名の由来は,アイヌ語がニブシで,大きい柄のある所の意。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1109 より引用)

ふむふむ。ちょっと良くわからない感じもしますが、nip-si で「柄・大きな」ということなのでしょうか。違和感があるのは、この si は通常、接頭語として使われるので、「大きい柄のある所」なのであれば si-nip-pe とかになりそうな気がするのですね。

なお,江戸期の松浦武四郎「戊午日誌」には「ニベシ。ニブシなるべし。是土人の庫の事也。木を組上て立しもの。此辺え土人等鹿のアマホを懸に来り,其取りし肉を其庫え入置為に作りしもの也」と見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1109 より引用)

これだと ni-pu-si で「木・庫・大きな」といった感じでしょうかね。

弟子屈(てしかが)

ちょっと前までは難読駅名の一つとして有名だった「弟子屈」ですが、駅の名前はいつの間にか「摩周」に変わってしまいました。確かに「弟子屈」より「摩周湖」のほうが有名なのは認めざるを得ないですが、少しばかり寂しい感じもします。

弟子屈の「テシ」は、天塩の「テシ」と同じだと思うのですが、「カガ」がちょっとわからないですね。というわけで山田秀三さんの説を見てみましょう。

 弟子屈市街は釧路川最上流の賑やかな処で,屈斜路湖や摩周湖を訪れる人の必ず立ち寄る街。また弟子屈町は釧路川源流一帯の土地で,町内のどこを歩いても風光が素晴らしい。日本最高の自然の中の町だろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.273 より引用)

いやー、北海道のあちこちを歩いている筈の山田さんがここまで絶賛するというのも珍しい話です。確かに弟子屈はいいところですけどね。

 弟子屈はテㇱ・カ・カ(tesh-ka-ka)。テㇱは元来は網み連ねたもの,ふつうは魚を捕るための簗であるが,地名に残っているテㇱの多くは,岩磐が川を横断して簗のような姿をしている処である。弟子屈の場合も岩磐がここで釧路川を横切っているので,そのことであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.273 より引用)

ということで、やはり「天塩」も「弟子屈」も同じ tes だったようです。

 次にカ(ka 上,岸)が二つ続いていて,実は読みにくい。知里博士小辞典はそれを「ヤナの・岸の・上」と訳された。カは軽い意味で添えられることがあって,例えばヌㇷ゚カといってもヌㇷ゚(野)と事実上は同じことであった。この場合もテㇱカでそういった岩磐の処を意味するようになっていて,その岸ということをいうために,もう一つカをつけたのでもあったろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.273 より引用)

ふむふむ。「テㇱ」が「テㇱカ」になるのは何となくありそうな気がしますが、「テㇱカ」に更に「カ」をつけるのは、やはり何らかの意味があるのだろうな、と思います。上記引用部の「この場合も──」の文は卓見かなぁ、と思います。

とりあえず、今日のところは知里説を採って tes-ka-ka で「簗・岸・の上」としておきましょう。

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