2012年10月28日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (84) 「幌茂尻・穂香・根室」

 


根室市の地名特集です。総本山の「根室」にすさまじい謎が残りました。



幌茂尻(ほろもしり)

温根沼大橋を渡って、丘を越えた先にある集落の名前です。漁港もあるようですね。

では、さっそく「角川──」(略しすぎ)を見てみましょうか。

〔近世〕ポロモシリ 江戸期から見える地名。東蝦夷地ネモロ場所のうち。「天保郷帳」には「ネモロ持場内,ポロモシリ」とある。安永年間飛騨屋久兵衛が場所を請負った時にネモロ・ポニホイ・ホロモシリ・ニシベツで曳網が用いられた(松前蝦夷地場所請負制度の研究)。すでにコタンがあったと考えられる。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1376 より引用)

ふむふむ。もともとの地名は「ポロモシリ」だったようですね。

「松前随商録」によれば,ノツカマフとヲン子トウの間にホンムシリという地名が書き上げられている。寛政年間運上屋がネモロに移された時,ネモロにアイヌ住人がなくポロモシリから移住したという(知床日誌)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1376 より引用)

えー、この調子であと 4 倍くらいの記述があるのですが、さすがに引用し切れないので……。まぁ、とにかく江戸時代から記録が残っている、歴史のある地名のようです。

地名は,アイヌ語のポロモシリ(大村の意)に由来するが,モシリは「島にあらず。昔祖父多く住居せし故に名く」という(北海道蝦夷語地名解)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1376 より引用)

ということなのだそうですが、ちょっと謎ですね。永田方正も註をつけている通り、「モシリ」と言えば「島」あるいは「大地」といった意味なので、poro-mosir だと「大いなる・土地」といった風に解釈するのが自然なのですが……。

ちなみに、千島列島の「幌筵島」(ぱらむしるとう、ほろむしろとう)の由来も poro-mosir である可能性があります。幌筵島は「大きな・島」なので、こちらは全く自然な命名です。



穂香(ほにおい)

これは読めなかった(笑)。正解を知って思わず笑みを浮かべてしまいましたが……。幌茂尻のお隣の集落です。

地名も難読ならば解釈も難しいようで……。「角川──」(略──)を見てみましょう。

地名は,アイヌ語のポン・ニ・オ・イ(小さい・木片あるいは寄り木・多い・所の意)に由来(北海道の地名)。一説には,ポニオイ(小蛇多い所の意)によるともいう(北海道蝦夷語地名解)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1351 より引用)

えーと、山田さんの解釈のほうは pon-ni-o-i で「小さい・木・多くある・所」ですね。永田地名解のほうは pon-i-o-i で「小さい・アレ・多くいる・所」という意味になります。「アレ」は「ヒグマ」だったり「蛇」だったり、時と場合によって変わるのですが、「小さいアレ」なので「蛇」だろう、ということでしょうか。

o-ni-o-i(「河口・木・多くある・所」)という地名は、知里さんの「──小辞典」にも載っているのですが、ホニオイ川の河口には流木が貯まるような入り江は見当たりません。もしかして……ですが、hon-ni-o-i で「腹・木・多くある・所」という解釈は成り立ったりしないでしょうか?

根室(ねむろ)

さぁ、またしても問題地名の登場です。「角川──」()を見てみましょう。

地名の由来には諸説がある。「蝦夷地名考并里程記」には,アイヌ語のニイモヲロ(静かで樹木のあるの意)により,港内は波静かで,海岸部には樹木が生繁っていることにちなむ説と,ニノヲロ(ウニがあるの意)により,弁天島にウニがあることにちなむ説があげられている。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1124 より引用)

ふむふむ。上原熊次郎説では ni-mo-oro で「木・静か・所」でしょうか。単語を並べただけのようにも思えるので、ちょっと違うかな? とも思わせます。nino-oro だと「エゾムラサキウニ・所」になりますね。

そして、我等が「角川──」には、まだ続きがあります。

松浦武四郎「戊午日誌」では,ニイムイ(木の湾の意)により,湾内の海底に埋れ木が多いことに由来するとある。「北海道蝦夷語地名解」では,ニムオロ(樹木繁茂する所の意)に由来するとし,「松前記」欄外の桜井家譜からの注記にも「慶安元年戊子歳,東夷樹林(ニムオロ),与数無(シユム)戦夷多死」と見えると説明されている。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1124 より引用)

松浦武四郎説の ni-moy だと「木・入江」となりますね。永田地名解の ni-mu-oro は……、んー、、「ム」が意味不明ですね。「木・塞がる(詰まる)・所」でしょうか。

ここまでで充分お腹いっぱいなのですが、ところが……。

このほか「北海道駅名の起源」では,メム・オロ・ペッ(湧壺・そこにある・川の意)による説や,ニ・ム・オロ(寄木の・詰まる・所の意)による説をあげている。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1124 より引用)

おいー(汗)。mem-oro-pet で「泉・の中にある・川」ですか。ni-mu-oro で「木・詰まる・所」は永田方正説と事実上同じですね。

まいったなぁ……。もはや人気投票になりつつありますが、そうですね、松浦説の ni-moy と永田説の ni-mu-oro が魅力的ですね。もともと ni-moy と呼ばれる何かがあって、地名であるということを強める意味で oro が後付けされたのかな、と想像したりもします。ただ、いずれにせよすっきりしないのも事実ですね。うーん……。

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