2012年11月3日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (85) 「友知・歯舞・珸瑶瑁」

 


週末のお楽しみ、やたらと字数の多いネタ(当社比 336 %)が今週もやってまいりました!



友知(ともしり)

根室の市街地からすこし東に行ったところの、友知湾沿いの集落の名前です。友知湾に沿った長い砂浜の先に「トモシリ岬」があり、岬の先には「チトモシリ島」と「友知島」があります。トモシリだらけでワケがわからなくなりますが……。

山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょうか。

 根室市街の東南,太平洋岸の地名,島名,岬名,湾名。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.243 より引用)

これだけバラエティ豊かに取り揃えた地名?も珍しいですね。友知コンツェルンでしょうか。

永田地名解は「トゥモシルシ tum-shir-ushi。湾島。直訳間の地面と云ふ義なり。二岬の間にある地面を云ふ」と書いた。どうもはっきりしない解であるが,友知湾内の土地を指したものか?
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.243 より引用)

えーと、永田説は tum-sir-usi で「間・土地・多くある所」という意味っぽいですが、確かにすっきりしないですね。

 更級源蔵氏アイヌ語地名解は「ここの沖にある島をトゥㇷ゚・モシリ(二つの島)と呼んだのが陸地の部落に移行したもの」と書いた。沖に友知島とチトモシリ島が並んでいる姿から見て興味深い見方である。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.243 より引用)

んー、となると「友知島」と「チトモシリ島」というのはメタなネーミングということになっちゃいますね。

 松浦図はその二つの島の処にトモシルシ,それに向かって突き出ている友知岬にトモシリウシノツ(ノッは岬)と書いた。ただ音だけでいうならばトゥ・モシリ・ウㇱ・イ(tu-moshir-ush-i 二つの・島が・ある・処)とその辺を呼んだのかもしれない。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.243 より引用)

tu-mosir-us-i で「二つの・島が・ある・処」という解釈に同感です。

ちょっと疑問が残るのが「チトモシリ島」なんですが、chi-tu-mosir だとしたら「われら・二つの・島」となってしまいます。「友知岬」を起点に考えると「チトモシリ島」の方が近いので、そういう意味で「われらの」をつけて呼んだのか、それともたとえば chiw-tu-mosir で「波・二つの・島」といった意味なのか……。謎が残ります。


歯舞(はぼまい)

「歯舞」と言えば、北方四島の「歯舞群島」を連想しますが、根室半島にも「歯舞」という地名があります。「歯舞中学校」という、現存する中では日本最東端の中学校があります。

「北海道の地名」を見てみましょう。

明治 30 年 5 万分図では歯舞村で,地名はアポマイと書かれていた。その沖の小島アポマイがこの名のもとだという。永田地名解は「アポマイ ap-oma-i。氷島」と書いた。詳しく訳せば「流氷・ある・もの(島)」。アとハは,よくどっちでも呼ばれるので歯舞の方の音で残ったものらしい。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.242 より引用)

ふむふむ、なるほど。apu-oma-i で「海氷・ある・もの(島)」ということのようです。沖合の小島は、現在でも「ハボマイモシリ島」という名前で呼ばれているみたいですね。灯台と桟橋があるようです。


珸瑶瑁(ごようまい)

「日本最東端の小学校」や「日本最東端の郵便局」などでおなじみの地名ですが、珸瑶瑁小学校は来年統廃合されるとのこと。仕方が無いこととは言え、ちょっと残念ですね……。

こちらも「北海道の地名」を見てみましょうか。

 根室市内の地名,海峡名。明治の 5 万分図を見ると,根室半島の突端部が珸瑶瑁村で,納沙布崎の南に並んだ岬がコヨマイ崎,その西の海岸の沖に小さいコヨマイ島がある。さらにその西の入江の中にコヨマイ部落があり,小川が流れている。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.242 より引用)

ということで、「珸瑶瑁」はもともと「コヨマイ」だったようです。

永田地名解は「コヨモイペッ。波中の川。コヨマペッと云ふべき筈なり」と書いたが,変である。明治の『大日本地名辞典』の書いた原名はコイ・オマ・イで,訳せば「波・ある・もの(あるいは処)」である。海内のコヨマイ島の姿から呼ばれたのであろう。いま納沙布岬と水晶島の間を珸瑶瑁海峡と呼んでいる。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.242 より引用)

永田地名解では koy-oma-i を「波中の」としましたが、ここはやはり「波・ある・もの(所)」とすべきなのでしょうね。珸瑶瑁の沖合には小島がありますが、国土地理院の地形図を見た限りでは「カブ島」と呼ばれているようです。


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