2013年1月13日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (106) 「勇足・押帯・居辺」

 


本別・池田のマイナーな難読地名?を中心にお届けします。



勇足(ゆうたり)

本別町南部、利別川左岸の地名です。訓読みすると「勇み足」になってしまいますが、これから書く文章が勇み足にならないように気をつけないと……。

というわけで、今回も山田秀三さんの「北海道の地名」から。

 利別川東岸の地名。池北線勇足駅あり。永田地名解は「エサン ピタラ(差出磧)。勇足(エサンピタラ)村。川中に斗出したる磧」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.296 より引用)

ん、「エサンピタラ」と「ゆうたり」には余りに違いがあるのですが……。というわけで続きです。

もう少し詳しく書けば,エ・サン・ピタラ「e-san-pitar 頭が・前(浜の方)に出ている・川原」の意。それに勇足と字を当てて,エサンピタラと呼んだのであるが,これも他地の人には読めない。音読みをして「ゆうたり」というようになった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.296 より引用)

うは(笑)。「勇み足」ならぬ「勇み足り」だったとは……。というわけで、e-san-pitar で「頭・出ている・川原」で良さそうです。地形図を見てみると、確かに本別 JCT のあたりで利別川の流れが北側に押し曲げられているところがあります。もともとの「エサンピタラ」はこの辺りの地名だったようです。

押帯(おしょっぷ)

本別町西南部の地名、川名。これもなかなか正しく読めない地名です。チェスのビショップの親戚のような感じがしますね(しません)。

では、今回は「角川──」(略──)を見てみましょうか。

 おしょっぷ 押帯 <本別町>
 古くはオシヲフともいった。十勝地方北東部,利別(としべつ)川支流押帯川流域。地名の由来には,アイヌ語のオ・シュオㇷ゚(川尻・箱の意)による説(アイヌ語地名の研究 2),オ・シ・オ・プ(そこに・それのフン・ごちゃごちゃある・川の意)による説(地名アイヌ語小辞典)などがある。天保年間の今井八九郎の東西蝦夷地大河之図にヲシヲフと見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.289 より引用)

なーんか、さりげなくとんでもない説が紛れてますね。「地名アイヌ語小辞典」と言うからには知里さんの「──小辞典」のことなんでしょうけど、ちらっと見た限りでは o-si-o-p 説は見当たらないような……。

素直に考えると o-suop でいいのだと思います。意味は「川尻・箱」なのですが、suop は知里さん曰く「川床の岩磐が箱のように深くなっている所」ということなのですが、もう一つの解釈として「両岸が絶壁で川底が岩の箱の形になつて青く水をたたえている所」というものもあります。

地形図で見た感じだと、押帯川が利別川に注ぎ込むあたりには、押帯川の横に 10 m 以上の「壁」ができているようにも見えます。壁と壁の間は数百メートルあるので、ちょっと「箱」とは形容しがたいかも知れませんが……。

居辺(おりべ)

居辺川は、押帯川の一筋南を流れる川で、利別川の支流にして、源流は上士幌町あるいは足寄町まで遡ります。今回も「北海道の地名」から。

 池田町北端部の川名(西支流),地名。相当な川で,松浦図はヲルベと書いたが,こうした簡単な形の名はかえって分かりにくい。永田地名解は「オル・ベ(丘・の処)と書き,オルはウル(丘)だとしたが,知里博士は or が ur の聞きちがいだとしても,動詞につく接尾辞 -pe は名詞につかないことを指摘した(アイヌ語入門)。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.296 より引用)

「接尾辞」がどうのとか、何だかややこしそうなことが書かれていますが、実は簡単なことで、-pe というのは「~するもの」という意味なのです。ですから、「丘・するもの」というのは明らかにおかしい、ということですね。

 その通りであるが,形が簡単なだけに,他に資料がない限り危なくて解のつけようがない。強いて永田解を生かすとすればウㇽ・ペッ(ur-pet 丘・の川)ででもあったろうか?
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.296 より引用)

至極まっとうな解かと思います(これ以上踏み込んだ解は、限りなく「創作」に近づくような)。とりあえず現時点では ur-pet で「丘・川」と解釈しておきましょう。

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