2013年5月26日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (110) 「樽前・覚生・社台」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。



樽前(たるまえ)

樽前山の麓に道央道の樽前 SA があるので、皆さんも良くご存じの地名だと思いますが、原義は比較的早く忘れられたのか、色々な解釈が残っているようです。

今回も、山田秀三さんの「北海道の地名」から。

 判読の困難な地名である。秦檍麻呂の解が知っている中で一番古いが「タルは垂る,マエは燃る。山焼けて土砂崩るる故よりして名付く」とあり,何とも変だ。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.382 より引用)

これは……そもそもアイヌ語すら無いですね。いや、アイヌ語由来でないといけない、という話では無いのですが。

次が上原熊次郎地名考で「夷語ヲタルマイの略語なるべし。ヲタは砂、ルーは解ける又は道、マイはヲマイ略語にて入る又は在る。昔時此嶺焼て土砂降りてより以来、川を砂の流るるゆへ此名になすべしといふ。未詳」と自信のなさそうな書き方である。だが以後,蝦夷地名解(書名),松浦武四郎,野作東部日記等はこれと同じことを書いた。孫引きの説らしい。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.382 より引用。強調部は原著者による)

ota-ru-oma-i で「砂・路・そこにある・所」でしょうか。樽前山は近世から近代にかけて活発な火山活動が記録されているので、確かに、そういう意味ではアリかも……とも思えるのですが。

一方、永田方正翁の「北海道蝦夷語地名解」では、taor-oma-i で「高岸・そこにある・もの」という新説が出てきています。アイヌ語地名としては、こちらのほうが自然な感じがしますね。

ちなみに、こんな珍説?もあるそうです。再び「北海道の地名」から。

 白老のアイヌ長老(故)は「タラ・オマ・イ(背負い縄・ある・処)じゃよ」と話してくれた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.382 より引用)

いろんな風に、解釈できるものですね(笑)。

覚生(おぼう、おぼっぷ)

樽前 SA の近く、樽前川の東側を流れる川の名前です。国土地理院の地形図には「おぼっぷ」とルビが振ってあったのですが、「おぼう」とも読むようですね。

今回は「角川──」(略──)を見てみましょう。

古くはヲホヲ・ヲホフ・ヲボウ・オポプ・オポップともいい,大鵜・雄鳳・大保富とも書く。胆振(いぶり)地方中央部、太平洋沿岸の覚生川流域。北に樽前山がそびえる。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.326 より引用)

ふむふむ。続きを見てみましょうか。

地名はアイヌ語のオポプで「川尻ニ水ガ湧キ出ル処」の意。この川は樽前川と合流していたが,噴火の時水が湧き上り破裂して別流となったという(北海道蝦夷語地名解)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.326-327 より引用)

うーん、なんか尤もらしいことが書いてありますが、樽前川と合流云々のところは、素直に頷けない気もしますね……。o-pop で「川尻・湧き出る」だと言うのですが、はてさて。

山田秀三さんは「北海道の地名」にて、次のようにも記しています。

 意味はともかく,古くはオボウの音だったようである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.382 より引用)

この音と地形から素直に?考えると、oho(-p) で「深くなる(・所)」という解釈も成り立たないかな? と思うのですが、いかがなものでしょうか。

社台(しゃだい)

社台は白老町の東部にある地名で、JR 室蘭本線「社台駅」があります。社台川は駅から見て更に西側を流れていますね。

山田秀三さんによると、sa-tay-pet で「浜側・林・川」だ、とのこと。何となく釈然としないものを感じたので、Google Map の航空写真を見てみたのですが……おおお! 山間部はおろか、平野部でも、いわゆる「川原」と呼ばれる部分にびっしりと木が茂っています。川から見た「川原」が「浜側」だと言うのであれば、この命名にはしっくり来ますね。


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