2013年8月3日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (129) 「恩根内・小車・島呂布」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

恩根内(おんねない)

美深町北部、天塩川東岸の地名で、同名の JR の駅もあります。おそらく onne-nay に由来するのだと思いますが……。今回は、久々に「角川──」(略──)を見てみましょうか。

〔近代〕昭和11年~現在の美深(びふか)町の行政字名。もとは美深町の一部,オンネナイ・オン子ナイ・オンネナイ原野・シユマルプ子プ。地名はアイヌ語のオンネナイ(老川,昔からなじんで来た川の意)に由来し,開拓当初から恩根内の漢字をあてはめていた(美深町会議事録)という。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.337 より引用)

歴史のある地名のようですが、どうやら地名のもととなった「オンネナイ」は現在の「オンネ沢川」のことでしょうか。だとしたら、他の川よりも短いですし、そもそも恩根内の集落とは反対側(西岸)を流れている。あれれ? と思わざるを得ないのですが……。山田秀三さんの「北海道の地名」も見ておきましょうか。

 onne-nai の onne は「年とった,もともとの」という意から「主要な,大きい」とも使われるが,諸地のオンネナイは必ずしも大きい川でない。何かわけがあるのではあろうが訳に苦しむ川名である。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.144 より引用)

うーん、全く同感です。とりあえず「恩根内」の語源は onne-nay で「長じている・川」なのですが、何がどう長じていたのかは不明、ということで……。

小車(おぐるま)

美深町大手に続く、「なんでこれがアイヌ語由来?」の第二弾です(いつの間にシリーズ化……?)。小車という集落は恩根内の集落の川向かいにあるのですが、そこには「オグルマナイ川」という川が流れています。はい、もうお解りの通り、これが「小車」の由来のようです。

では、「北海道の地名」を見てみましょうか。

永田地名解は「オ クルマッ オマイ。和女居る処」と書いた。o-kurmat-oma-i「川尻に・和人の女が・いる・もの(川)」の意。語尾の i は nai(川)でも呼ばれたのであろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.144 より引用)

ふむふむ、なるほど。黒松内(kurmat-nay)と似たような地名ではないか、ということですね。念のため更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」も見ておきましょうか。

もとの名のオクルマトマナイがオクルマナイになり、小車の字を当ててからオグルマナイとなった。川尻に(オ)日本の女が(クルマツ)いる(オマ)川(ナイ)という意味だというが疑問。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.170 より引用)

……。最後の最後で論旨をひっくり返してしまうあたりが流石です。「疑問」と結ばれていますが、残念ながら対案は記されていません。更科さんは「黒松内」の由来にも同様に疑問を呈しておられました。どこか引っかかるものがあったんでしょうか……。

とりあえず、今のところは o-kurmat-(oma)-nay で「川尻・和人の女・(いる)・川」としておくのが無難かと思います。

島呂布(しまろっぷ)

恩根内の北隣にある集落で、「シマロップ川」という川もあります。川自体、オンネナイ川よりもはるかに大きな川なのですが、地名としてはオンネナイの方がメジャーなのが不思議です。

では、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。

シュマロップ川
 天塩川右小川シュマ・ルㇷネ・ナイの訛りで、川の中に大石のごろごろしている川の意。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.171 より引用)

ふーむ、suma-rupne-nay で「石・大きくある・川」ですか。rupne とはあまり聞かない単語のような気がしますが、知里さんの「──小辞典」にもちゃんと掲載されている語彙なので、きちんと押さえておきましょう。

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