2013年8月10日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (131) 「音威子府・稚宇遠川・敏音知」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

音威子府(おといねっぷ)

美深町の北に位置する村の名前です。同名の駅もありますね。昔は国鉄天北線がここから分岐していました。黒いお蕎麦でも有名なところです。名うての難読地名ですが、こういった所に限ってアイヌ語での解釈は明瞭だったりするので助かります。

まずは山田秀三さんの「北海道の地名」から。

 北海道駅名の起源は「オ・トイネ・プ(川口のにごっている川)から出たものといわれている」と書いたが,川尻を眺めてもそう濁っているように見えないので考えさせられた。川底は泥らしいので,同じ言葉ではあるが,o-toine-p「川尻(を歩くと)・泥んこである・もの(川)」とでも読むのかなと思ったが自信はない。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.143 より引用)

ふーむ。楽勝かと思ったのですが、必ずしもそうでもなさそうな雰囲気が……。ではセカンドオピニオンということで、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」から。

 天塩川の支流オトイネッ川からとったもので、川口(オ)のにごっている(トイネ)ものすなわち川(プ)の意味で、こうした濁り川にはいとう魚がよくのぼるので、いとうをとる川として名付けたものである。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.173 より引用)

ふむふむ。更科さんは旧来の「川口・濁っている・川」説のようですね。

少し気になったので「──駅名の起源」や「角川──」なども確認してみたのですが、「濁る」よりも「泥まみれ」のほうが多いようでした。o-toyne-p は「川尻・泥まみれ・もの(川)」だ、としておきましょう。

稚宇遠川(わっかうえんかわ)

中頓別町南部、ペンケ山の麓に端を発し敏音知のあたりで頓別川と合流する川の名前です。

おそらく、wakka-wen-nay で「水・悪い・川」なのでしょう。単なる wen-nay ではなくて wakka- が頭につくので、「水が良くない川」ということになりますね。飲用に適さない成分の水が流れていたのかも知れません。

敏音知(ぴんねしり)

中頓別町の中央部に位置する山の名前で、また、麓の集落の名前でもあります。敏音知岳(703 m)の隣には松音知岳(531 m)があります。どうやら何らかの関連性がありそうですが……(白々しい)。

更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」を見てみましょう。

 天北線敏音知駅のある市街地で、傍の敏音知岳の山の名を駅名にしたもの。ピンネ・シリは男山の意で、隣の松音知が女山というように丸くゆるやかなのに対して、こっちの方は鋭くとがって、丈もはるかに高い。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.185 より引用)

はい。pinne-sir で「男・山」ということですね。

古代の狩猟生活は山が獲物を生んでくれると考えたのではなかろうか。道東北部では男山が高く、道南では女山がすぐれていることも、今後研究の余地があるように思う。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.185 より引用)

こういった、伝承にまつわる考察が入るあたり、さすが更科さんですね。pinnematne と言えば、日高の「沙流」と知床の「斜里」を呼び分ける際に、沙流を matne-sar、斜里を pinne-sar と言った、という話がありましたね。これも道南の日高が matne なのが面白いです。

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