2013年11月30日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (162) 「作返・振老・六志内」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

作返(さくかえし)

幌延町と天塩町の間には天塩川が流れていて、国道 40 号の天塩大橋を渡って南に進んだところで国道 232 号と分岐しています。このあたりの地形図を見ると「サツカヘシ」という地名があり、そこから少し東には「作返」という地名があります。地形図上は違う地名のようですが、由来は同じなんじゃないかな……と思わせます。

では、更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」を見てみましょう。

 サッカイシ
 天塩川左岸畑作地帯。もと作返という字を当てたりした。サッカイシは夏に湖が増水するところの意だという。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.154 より引用)

ふむふむ。やはり「サツカヘシ」と「作返」の由来は同じと考えて良さそうですね。ただ、どうにも意味が良くつかめません。

ちなみに「角川──」(略──)には、次のようにあります。

地名は,アイヌ語のサㇰカチウシ(夏になると湖水が増水するところの意)に由来する(天塩町史)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.593 より引用)

うーむ。カナ表記は揺れているものの、解釈は見事に一致していますね。天塩町史の元ネタが更科さんである可能性も十分考えられそうですが……。

さて、どうにもアイヌ語での解釈がうまくいかないので、もう少し続きを見てみましょうか。

江戸期の松浦武四郎「丁巳日誌」に「サコカイシ,右の方小川有。其上に沼有るよし。春頃水嵩多き時は運上屋を立て,此処にて泊るよし也」と見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.593 より引用)

んー、もしかして sak-o-kay-us-i だったのでしょうか。これだと「夏・河口・波・多くある・ところ」となります。ちょっと弱いところは、一般的には「波」は koykay-kay とする場合が多いようで、kay を「波」と解釈するところがちょっと恣意的かも知れない、という点です。まぁ、音韻変化の可能性もありますし、あるいは単に kay-kay を略しただけかも知れない、ということで……。

振老(ふらおい)

幌延から国道 232 号で天塩の中心部に向かう途中の地名です。かつて国鉄羽幌線の駅もあったのだとか。

では、今回は山田秀三さんの「北海道の地名」から。

振老 ふらおい
天塩町内。天塩川をサロベツ川口から少し上った処の南岸の地名。国鉄振老駅あり。ここはフラウェニといわれた処で,語義はフラ・ウェン・イ(hura-wen-i においが・悪い・処、あるいは川) であったようである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.140 より引用)

富良野と同じく「におい」系の地名だったのですね(汗)。更科さんの「──地名解」にも、次のようにあります。

アイヌ語のフラ・ウェン・イで、臭いの悪い所が転誂したものであるが、この臭いの悪いのは何であるか不明。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.153 より引用)

おおよそ想像通りですね。一体何の臭いが悪かったのでしょう。hura-wen-i で「臭い・悪い・ところ」という意味でした。

六志内(ろくしない)

「ちゅーちゅープリン」で有名な天塩町の中心部から見て東に位置する地名で、「六志内」「六志内川」「ロクシナイ峠」のほかに「ルークシュナイ」という地名もあります。サージェントルーク篁III世みたいで格好良いですね(←

ちなみに、天塩町の中心部から隣の中川町に向かうには、ロクシナイ峠を通って雄信内に出て、そこから天塩川沿いに国道 40 号を走るのがおそらく最短ルートだと思います。というわけで、この峠道は昔から重用されたものだと思われるのですが……。

というわけで前振りはこの辺にして、山田秀三さんの「北海道の地名」をどうぞ。

六志内 ろくしない
天塩川口に東の山から来て注いでいる川名,その川筋の地名。この川を溯って六志
内峠を越えると,少し川上の雄信内に出る。天塩川の最下流は大きく屈曲しているので,この峠越えをするのが上流への近道である。六志内はル・クㇱ・ナイ(ru-kush-nai 道が・通っている・沢)で,語義通りの名である。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.139 より引用)

はい。ru-kus-nay で「道・通っている・川」でした。重要な峠道だったからこそ、地名になったということですね。

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