2014年1月25日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (170) 「瀬戸牛・忍路子・札久留」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

瀬戸牛(せとうし)

西興部村役場から見て東側にある峠の名前です。かつては国鉄名寄本線にも同名の駅があったとのこと。あれ? と思ったのですが、昭和 36 年に「西興部駅」に改称されたのだそうです。なるほど、現在の「西興部」集落の旧名だったのですね。

というわけで、今回は「北海道駅名の起源」から。

起 源「興部」の西方にあるため、「西」をつけたものである。もと「瀬戸牛」といい、アイヌ語の「セツ・ウシ・ナイ」(鳥の巣の多い沢)からとっていたが、昭和36年3月20日改めた。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.195 より引用)

ふむふむ。set-us-nay で「巣・多くある・川」なのですね。ところで、現在の地形図を見た限りでは「瀬戸牛川」という川は見当たりません。現在のどの川が set-us-nay だったのか、ちょっと気になるところです。

忍路子(おしょろっこ)

西興部村中央部、役場から少し南へ進んだあたりの地名です。同名の川もあります。

かなりマイナーな地名ですが、我らが「角川──」(略──)に記載がありました。

地名は,オソ(ショ)ルツケセトシ(川口,水中のかくれ岩,くずれているセトシ川)に由来するという。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.291 より引用)

うぅーむ。o-so-rutke-set-us だと確かに「河口・水中のかくれ岩・崩れている・(巣・多くある)」となりますね。この場合の set-us は「セトシ川」という固有名詞を意味するので、逐語訳はあまり意味がありません。

ただ、このような記録もあるようで……。

松浦武四郎「廻浦日記」に, オシユルリヤツプと見える。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.291 より引用)

むぅ。これは……。osor-riya-p であれば、「尻・越冬する・もの」とも読めそうな感じがします。地形を見ても、忍路子川が興部側に注ぎ込むあたりはなんとなーく尻っぽいような……(ただ、riya-p という例が他には見当たらないので、そこがちょっと難点かも)。

「おしょろっこ」に戻りますが、音の感じからは osor-kot (「尻・くぼみ」)という解釈も成り立ちそうな感じがするんですよね。いかがでしょうか。

札久留(さっくる、さくるー)

西興部村から札久留峠を越えた先にある地名です(滝上町札久留)。近くには「サクルー川」も流れています。

この地名の由来は、sak-ru で「夏・道」ですね。更科源蔵さんは次のように記しています。

アイヌ語サク・ル(夏道)は、夏に興部川や天塩川の上流の柵留川に越える道であったからである。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.297 より引用)

確かに、サクルー川支流の原子川を遡っていくと「柵留山」があり、山を越えた西側には「サックル川」があります。サックル川は岩尾内湖のあたりで天塩川と合流するので、これが本来の sak-ru だったと考えることに特に異論はありません。

ただ、厄介なのが「札久留峠」の存在です。この峠を越えると藻興部川筋に出ることができるのですが、これは本来の sak-ru では無いんじゃないかな……と思ったりします(確証はありませんが)。サクルー川流域に「札久留」という集落ができて、そこに抜けるための峠の名前として(便宜的に)名付けられただけなんじゃないかなぁ……と思ったりします。

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