2014年2月1日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (172) 「ニセイカウシュッペ山・ペイトル川・江差牛山」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

ニセイカウシュッペ山

大雪山から見て、層雲峡を挟んで向かい側にある山の名前です。日本海側水系とオホーツク海側水系を隔てる分水嶺に程近いところに位置していますが、全山が石狩川(日本海側)水系で、上川町に含まれます。標高は 1,883 m とのことで、このあたりでの高山のひとつです。

「ニセイ」が「峡谷」だろう、というのは何となく理解ができるのですが、「カウシュッペ」が今ひとつ意味が良くわかりません。というわけで山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

ニセイ・カ・ウシ・ぺ「nisei-ka-ush-pe 峡谷・の上・にいる・もの(山)」の意。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.104 より引用)

ああ、なるほど……。地形図には「ニセイカウシュッペ山」と書いてあったのですが、それがそもそもの罠だったのですね。「ウシュッ」ではなく「ウㇱ」が正解だった、ということのようです。

nisey-ka-us-pe で「断崖・上・ある・もの」なのですね。ちなみに、「ニセイカウシュッペ山」に源を発する「ニセイノシキオマップ川」という川があるのですが、これは nisey-noske-oma-p で「断崖・まんなか・に入る・もの」のようです。

また、「北海道の地名」によると、nisey-kes-oma-p で「断崖・末端・に入る・もの」という意味である「ニセイケㇱオマップ川」があるようなのですが、地形図を見ると「ニセイシオマップ川」になってしまっています。これも転記の際の誤記なんでしょうか。tes という単語も良く地名に出てくる(天塩とか弟子屈とか)ので紛らわしいですね……。

ペイトル川

大雪山に源を発し上川町を流れる安足間(あんたろま)川の支流で、安足間山の東側を源流とします。さて、これは一体どういう意味でしょうか……?

では、今回も「北海道の地名」から。

安足間川の東支流。旭川市史の解は「ペートゥワルペッ(pe-tuwar-pet 水・ぬるい・川)」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.101 より引用)

ほうほう。地形図で見ると、ペイトル川の水源から程近いところ(但し分水嶺の向こう側)に「愛山渓温泉」があります。もしかしたら、ペイトル川の水源にも温泉が湧き出しているところがあるのかもしれませんね。

というわけで、ペイトル川(ペートル川)の由来は pe-tuwar-pet で「水・ぬるい・川」と考えれば良いようです。

ちなみに、「旭川市史」とあるのは「上川郡アイヌ語地名解」のことですね。他ならぬ知里真志保さんの手によるものです。

江差牛山(えさうしやま)

上川町の市街地は、南は石狩川、北はエチャナンケップ川に接しているのですが、この両川の間に聳え立つのが江差牛山です。檜山の「江差」と字が似ていますが、こちらは「えさし」ではなくて「えさうし」ですね。

今回も「北海道の地名」から。

たぶんエ・サ・ウシ・イ(e-sa-ushi-i 頭を・浜に・つけている・もの)で,石狩川に山裾の突き出している姿によって呼ばれた名であろう。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.104 より引用)

ふむふむ。あれ……? これってもしかして……

エサシを「エ・サ・ウシ・イ(e-sa-ush-i 頭を・浜に・つけている・者)。つまり岬」と分析して説明した。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.440 より引用)

檜山の「江差」についても、全く同じ解がなされていました。そして……

エサシ(esashi 岬)←(e-sa-ush-i 頭が・浜に・ついている・処)と解すべきようである。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.172 より引用)

北見枝幸についても同様でした。「突き出た岬」状の地形を指す地名なんですね。e-sa-us-i で「頭・前・ついている・もの」と理解すれば良いようです。

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