2014年3月30日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (189) 「モソシベツ川・ペンケペッカンロ川・トエナイ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

モソシベツ川

総主別川の西側で額平川に合流する小支流の名です。音からは mo-so-us-pet、即ち「小さな・総主別川」と考えられるのですが、ところが!

意外や意外、永田地名解には次のように記されています。

Moso ush pe  モソ ウㇱュ ペ  蚋(ウジ)多キ處 鹿死シテ蚋多シ故ニ名ク
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.236 より引用)

……(汗)。ええ、確かに「ウジ」を意味する mosospe という単語があります。「モソㇱペッ」と発音がそっくりですね。これは、永田方正がインフォーマントとのコミュニケーションをミスった(←もはや日本語とは思えない悪文)と考えるべき……なんじゃないでしょうか。

あるいは、最初は単なる言葉遊びだったのが、いつしか「鹿が死んでウジがわいて……」という物語が後付けでできてしまったのでしょうか。そういう話を創作してしまったのであればお茶目な話ですね。

ペンケペッカンロ川

額平川の北側を流れる小支流の名前です。「ペッカンロ」とは、一体どういう意味なのでしょう……。

明治期の地図を見てみると、現在の「ペンケペッカンロ川」に相当する位置に「ペッカウント」とあります。これを素直に解釈すると pet-ka-un-to で「川・岸・そこに入る・沼」となりますね。

ただ問題は、流域にそれっぽい沼が見当たらないことです。そして、現在の川名は「ト」ではなくて「ロ」で終わっているのも気になります。

「ペッカンロ」で意味を考えてみると、pet-ka-un-ru-o(-nay) という想像もできるかと思います。これだと「川・岸・そこに入る・道・そこにある(・川)」となります。かなり意味不明な名前に見えますが、ここでは pet を(本流である)額平川、nay を(支流である)ペンケペッカンロ川と考えてください。

地形図を見ると、芽生のあたりの額平川は、山際すれすれのところを通っています(川が崖を浸食しているといった感じでしょうか)。川の南側は段丘状になっているので、現在の道路は南側を通っているのですが、このルートだと総主別川や宿主別川を徒渉しないといけません。

一方で、川の北側は先述の通り山際すれすれのため、ここを歩いて行くのは危険が伴います。その代替ルートとして、(ペンケ)ペッカンロ川は適切だと思われるのです。なので、この谷は ru として利用されたのではないかなぁ、と思うのですが……。

トエナイ川

トエナイ川。一体何を……(さぁ)。

平取町芽生(めむ)と貫気別(ぬきべつ)の間のあたりで額平川に注ぐ支流の名前です。何だか意味が良くわからないですね。

この「トエナイ川」、明治期の地図にも「トエナイ」とありますが、東西蝦夷山川地理取調図には「トウナイ」とあります。これであれば、to-nay という可能性が出てきますが、あるいは to-un-nay だったのかも知れません。これであれば「沼・そこに入る・沢」となりますね。

それにしても、またしても「沼」ですね……。トエナイ川が額平川に注ぐあたりは少し開けているので、もしかしたら、かつては沼沢地だった時代もあったんじゃないかな……などと。いかがでしょうか。

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