2014年7月6日日曜日

次の投稿 › ‹  前の投稿

アイヌ語地名の傾向と対策 (192) 「当麻内・ラフナイ川・遠浅」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

当麻内(とうまない)

厚真町を流れる川の名前で、かつては同名の地名もありました。現在は「豊沢」と呼ばれているあたりです。

今回も更科さんの「アイヌ語地名解」から。

当麻内川(とうまないがわ)
厚真川の右小川。ト・オマ・ナイで沼にある川の意。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.75 より引用)

おー、あっさりズバっと来ましたね。さすが更科さんです。ちなみに「厚真川の右小川」というのは、知ってか知らずかアイヌ流儀での解釈で、上流から下流に向かって見た場合は「左岸」となります。

我らが「角川──」(略──)にも、次のように記載がありました。

 とよさわ 豊沢 <厚真町>
〔近代〕昭和32年~ 現在の行政字名。はじめ厚真(あつま)村,昭和35年からは厚真町の行政字。もとは厚真村の一部,ウクル・カルマイ・当麻内・カルマイ原野・軽舞・ノヤスベ・野安部(のやすべ)・トーマナイ・トウマナイなど。かつて当麻内と称した地域。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1003 より引用)

ふむふむ。まだ続きがあります。

当麻内はアイヌ語のトーオマナイに由来するといい,「沼がそこにある沢」の意。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1003 より引用)

はい。to-oma-nay で「沼・そこにある・沢川」と解釈するので間違いなさそうですね。ちなみに、現在の豊沢集落のあたりは、山に挟まれた平地に田んぼが群在する印象ですが、

現在でも竜神沼・清水沼が残っているが,昔は一帯がヤチで沼も大きかったという(厚真の旧地名を尋ねて)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1003 より引用)

確かに、地形を見るとそんな感じがしますね。このあたりには明治 28 年に熊本から入植者があり、水稲の試作に成功したのが開拓の先駆けとなったのだそうです。

ラフナイ川

厚真川の西側を併流して、上厚真の下流で厚真川と合流する小河川の名前です。その名前を見る限りではアイヌ語起源っぽい感じなのですが、残念ながらあまり情報が見つかりません。

まず、「ラフナイ」という表記を素直に解釈すれば、rap-nay ではないかと考えられそうです。rap の解釈が難しいのですが、たとえば「下りる・川」といった解釈が考えられるかと思います。

もう一つの考え方として、「ラフナイ」が実は「ヲフナイ」だったのではないか、という可能性も検討しておきたいところです。オホーツク海沿岸の紋別にも「ヲフナイ」と記録された川があるのですが、音からは oho-nay という解釈が想像できます。この場合は「(水嵩が)深い・川」となります。

今更ながらではありますが、「ラフナイ川」はどこ? という話も考えておきたいのですが、現在のラフナイ川は(前述の通り)厚真川の西側を北から南に併流している小河川です。上流には「鶴の沼」や「三ケ月沼」があるのですが、この「三ケ月沼」に流入・流出する河川が本来の「ラフナイ川」だったのであれば、「三ケ月沼」の部分を指して「深い川」と評した可能性もゼロではないのかな? と思ったりもします。

もっとも、その場合は「トーウンナイ」だったり「トーウㇱペッ」といった川名になりそうな気もするのですが。

さて、上記二つの可能性を考慮して、似た音の川が記録されていないか調べてみたところ、永田地名解に「オ フム ウㇱュ ナイ」という川があることがわかりました。ちなみに o-hum-us-nay で「河口・音・ある・川」だとしています。

松浦武四郎の「東西蝦夷山川地理取調図」を確認してみたところ、「ヲフムセナイ」という川が見つかりました。おそらく「オ フム ウㇱュ ナイ」のことだと思われるのですが、残念ながら場所が少し離れているため、「ラフナイ」あるいは「ヲフナイ」と同一の川と考えるのは厳しそうです。

遠浅(とあさ)

勇払郡安平町(旧・早来町)の地名で、同名の駅もある……ことをついさっき知りました(汗)。室蘭本線の駅なのですが、苫小牧-岩見沢間の駅なので、比較的マイナーなほうではないかと言い訳をしてみたり……。

遠浅と言えば、苫小牧のあたりは遠浅の海で、本来は大型船の就航には向かない海岸地形でした。それを克服するための大工事を行って港を作った結果現在の繁栄がある……ような気がするのですが、遠浅駅があるのは内陸部の安平町なので、ちょっと変な気もします。というわけで、「北海道駅名の起源」を見てみましょう。

  遠 浅(とあさ)
所在地(胆振国)勇払郡早来町
開 駅 明治35年9月21日(北海道炭砿鉄道)(客)
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.74 より引用)

ふむふむ。そもそも駅名からして「とおあさ」ではなくて「とあさ」ですよね。続きを見てみましょうか。

起 源 アイヌ語の「ト・アサム」(沼の奥)または「ト・サム」(沼の端)の転かである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.74 より引用)

「遠浅」と言えば苫小牧ですが、その由来が「沼ノ端」というのは面白いですね(「沼ノ端駅」は「苫小牧駅」の隣の駅です)。

山田秀三さんの「北海道の地名」には、次のようにあります。

勇払郡早来町内の地名,川名,駅名。明治29年5万分図では,安平川中流の西支流が細長い沼でトアサと書かれていた。その沼の奥の処が,今の遠浅駅(室蘭本線)や市街で,その上流が遠浅川である。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.377 より引用)

なるほど。ちなみに山田さんは、to-asamto-sam では、前者の可能性が高いと考えていたみたいです。to-asam で「沼・奥」と考えておいて良さそうですね。

現在の地形図には沼の姿は見当たりませんが、山田さんが言及している明治29年の地図では、確かに沼が存在していたことを確認できます。

北海道立図書館 デジタルライブラリーより引用)

前の記事次の記事

www.bojan.net
Copyright © 1995- Bojan International

0 件のコメント:

最近の記事

    スポンサーリンク