2014年10月11日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (219) 「留辺蘂・プトイサロマ沢川・ワカケレベツ沢川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

留辺蘂(るべしべ)

無加川中流域に存在したかつての町名(現在は北見市留辺蘂)で、現在でも同名の駅があります。北海道の「読めないアイヌ語地名」の代表格ですが、皮肉にも難読だったが故に広く世に知られることとなった地名……のひとつでしょうか(あとは長万部とか弟子屈とか?)。

この「ルベシベ」は、普通に考えると ru-pes-pe で「路・沿って下っている・もの」ですから、つまりは「道のついた川」ということになりますね。川沿いの坂道は往々にして良い峠道となるので、事実上は「ルベシベ」=「峠道」と解釈しても問題ありません。

というわけで、もう解は出てしまっていますが、とりあえず山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょうか。

留辺蘂 るべしべ
 留辺蘂町は無加川中,上流一帯の土地。留辺蘂市街は町の東端部,無加川沿いの相当な街である。パナワルペㇱペ(現称東無加川)とペナワルペㇱペ(現称大久保川)の二川が北から並流して無加川に入っている。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.201 より引用)

ふむふむ、「パナ」が川下で「ペナ」が川上なのですが、ふたつのルペㇱペがあったのですね。

pana-wa-an-rupeshpe(下流・に・ある・峠道沢),pena-wa-an-rupeshpe(上流・に・ある・峠道沢)の意であろう。どっちを溯っても山越えすれば佐呂間別川の源流に入れる。現在は東無加川筋の方を佐呂間街道が通っている。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.201-202 より引用)

ちなみに、引用文中にある「佐呂間街道」は現在の道道 103 号線で、峠の名前は「丸山峠」と言うのだそうです。「ルペㇱペ」が街の名前になってしまったから遠慮しているのかもしれませんが、どうせだったら「留辺蘂峠」あたりにすればいいのに……。

プトイサロマ沢川

丸山峠を越えた先を流れている佐呂間別川の支流の名前です。佐呂間別川の流域なのに、なぜか北見市(旧・留辺蘂町)に所属しているのがちょっと不思議な感じがします。

もっとも、不思議なのは所属だけではなく、「プトイサロマ沢川」という名前自体もちと不思議でして……。音からは put-tuy-sar-oma-pet かな、と思わせます。これだと「河口・切れる・佐呂間別川」となりますね。河口が何らかの理由(佐呂間別川の本流と考えるのが自然でしょうけど)によって崩される川、なのであれば何となく理解できそうな感じです。

ただ、松浦武四郎の「東西蝦夷山川地理取調図」には「クトイシヤラマ」とあります。「シヤラマ」が sar-oma だとすると、「プトイ」はもともと「クトイ」だった、という憶測も出てくるのですが、これだと kut-o-i-sar-oma-pet で「崖・多くある・もの・佐呂間別川」とも解釈できそうです。

kutput になってしまったのは、音韻変化かもしれませんし、あるいは kut (「咽喉」という意味もあり、転じて湖の出口も意味する)と put (「河口」)の意味するところが似ていたからかも知れません。

ワカケレベツ沢川

プトイサロマ沢川の少し北(下流)で佐呂間別川に合流する支流の名前です。なんとなーく想像がつくような、でもちょっとおかしいような感じのする地名ですが、なんとなーく想像がつくほうがおそらく正解です(汗)。

明治期の「北海道地形図」を見てみると、現在の「ワカケレベツ沢川」のところに「ワㇰカペケレ」と書いてあります。wakka-peker(-pet) で「水・清い(・川)」という意味だったのでしょう。

もちろん、これだと「北海道地形図」が間違っている可能性も拭いきれないので、東西蝦夷山川地理取調図も見ておきましょう。……あれっ(汗)。

えーと……。佐呂間別川の支流としては「ハンケワツカヘケレ」と「ヘンケワツカヘケレ」があります。とりあえず「ケレ」ではなくて「ヘケレ」だったので、もともとは peker で、後に(転写時の脱字などで)「ペ」の字が脱落して「ケレ」になったと見て良さそうな感じです。

ただ、現在の「ワカケレベツ沢川」と思われる場所には「イチヤンヤヲマフ」と記されていて、少し下流側の支流に「ヘンケワツカヘケレ」とあります。この支流は、現在の「イナヤンオマップ川」(ママ)に相当すると考えられます。

取り違えた上に誤字脱字?

……どうやら、どこかのタイミングで「ヘンケワツカヘケレ」と「イチヤンヤヲマフ」が入れ替わってしまったようです。しかも「ヘンケワツカヘケレ」が「ワカケレベツ沢川」になったのはともかく、「イチヤンヤヲマフ」に至っては「イヤンオマップ」という、稲尾和久金田正一を足して二で割ったような(違う)名前になってしまっています。

「イチヤンヤヲマフ」は ichan-ya-oma-p だったと考えられるので、「イナヤン──」のほうが誤りであると思われます。

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