2014年11月23日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (232) 「呼人・車止内川・オショップ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

呼人(よびと)

網走湖の東側の地名で、同名の半島が網走湖に突き出ています。JR 石北本線の駅もありますね。寺岡さんとは関係無いはず……です。

では早速ですが、山田秀三さんの「北海道の地名」を見てみましょう。

呼人 よびと
 網走湖東岸の地名,半島名,川名。網走湖東岸の北端部から,湖の北東が細長く入り込んでいて,湖本体との間はひょろ長い出岬の形になっている。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.209 より引用)

はい。ここまではいいですよね。

その長い入り込んだ湖の部分が元来のヨビトであって,知里小辞典は「ヨピト yopi-to 親沼から別れ出ている湖。もと i-opi-to(それを・捨て去った・沼)。そこから別れて行った沼の義である」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.209 より引用)

なるほど。i-opi-to で「それ・捨て去った・沼」と考えれば良いのですね。i という指示代名詞は熊やマムシなど、言挙げを憚る場合に良く用いられますが、ここでの i は単に「網走湖」のことを指していると考えて良さそうです。

……と思っていたら。

(網走市史地名解では e-opi-to。そこから・捨てて行く・沼と書かれた)。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.209 より引用)

「網走郡内アイヌ語地名解」は他ならぬ知里さんの手になるものなのですが、確かに e-opi-to で「『そこから分かれていつた沼』の義である」と書かれていますね。

ちなみに東西蝦夷山川地理取調図では「ユウヒトウ」という文字が見えます。i-opi-toe-opi-to のどちらとも近いので、元々の形がどうであったかは何とも言えない感じがします。

車止内川(くるまとまない──)

天都山にある「北海道立北方民族博物館」のあたりから東流して、網走港に注ぐ川の名前です。地形図に描かれていないのはどうしてだろう……と思ったのですが、どうやら途中から山の下のトンネルを流れていたからのようです。現在はトンネルのおかげで網走港に直接注いでいますが、かつては網走川に合流していたと考えられます。

かなりマイナーな川ですが、幸いなことに知里さんの「網走郡内アイヌ語地名解」に記載がありました。

(105) クルマトマナイ クルマッ・オマ・ナイ(kurmat-oma-nai)「神女・居る・沢」。
(知里真志保「知里真志保著作集 3『網走郡内アイヌ語地名解』」平凡社 p.285 より引用)

なるほど。kurmat-oma-nay だったのですね。kurmat は一般的には「日本人の女」と訳されますが、知里さんは何故か「神女」と解しています。ということで、ここでも「神女・そこにいる・沢」としておきましょう。

オショップ川

大観山にある東京農業大学キャンパスのあたりから東流して、鱒浦駅の北側でオホーツク海に注ぐ小河川の名前です。こちらも知里さんの「網走郡内アイヌ語地名解」に記載がありました。

(381) オショプ(Oshop) オ・ショ・オ・ㇷ゚(O-sho-o-p)。オ(川尻に),ショ(滝),オ(ある),プ(者)。川尻が急いで滝のように流れ落ちている川。
(知里真志保「知里真志保著作集 3『網走郡内アイヌ語地名解』」平凡社 p.310 より引用)

ふむふむ。o-so-o-p で「河口・滝・そこにある・川」なのですね。河口部を地形図で見た限りでは、多少の高度差はあるものの、「滝」と言うにはちょっと厳しそうに思えるのですが、その辺は知里さんも考慮に入れたか「滝のように流れ落ちる」という表現になっていますね。

ちなみに、オショップ川の北隣を「オビオショップ川」という川が流れています。こちらは opi-o-so-o-p で「分かれていく・オショップ川」という意味みたいです。「呼人」と同じく opi- 系の地名ですね(ただ、現在の地形を見た限りでは、オビオショップ川はオショップ川の支流とは言えない独立した河川のように見えます)。

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