2015年5月10日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (248) 「知円別・ケンネベツ川・キキリベツ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

知円別(ちえんべつ)

羅臼町北部の旧地名で、現在も同名の漁港があります。また漁港には「チエンベツ川」が注いでいます。現在の地名は「岬町」です。

「知円別」の意味ですが、羅臼町史には次のようにあります。

○知円別(チエンベツ)
 字名改正により岬町と称す。現在学校、川、橋などに名が冠されている。夷名チエツフンベツで「魚の多いところ」と知床日誌にはあり、バチェラー辞典では「岬にある川」となる。
(羅臼町史編纂委員会・編「羅臼町史」p.58 より引用)

ふむふむ。大体そんな感じのようですね(なんとアバウトな)。「東西蝦夷山川地理取調図」には「チエフウシヘツ」とありますが、永田地名解には「チエㇷ゚ ウン ナイ」とあります。そして現在は「チエンベツ」ですね。

とりあえず、chep-un-pet で「魚・いる・川」あるいは chep-us-pet で「魚・多くいる・川」あたりだったと考えていいのではないでしょうか。

ケンネベツ川

チエンベツ川の北隣りを流れる川の名前です。現地では「建根別」と漢字表記されるケースもあるようですね。

今回も「羅臼町史」を見てみましょうか。

○建根別(ケンネベツ)
 岬町の一部、現在、川、橋などにその名が冠されている。知床日誌にもケンネベツなる地名が見あたらず。
(羅臼町史編纂委員会・編「羅臼町史」p.58 より引用)

……あれ? これで終わりですか?(汗) これ、町史の「羅臼地名解」という章からの引用なんですが、何の解釈も示されないまま終わってしまっていますね。

「ケンネベツ」という音から素直に解釈すると、kene-pet で「ハンノキ・川」でしょうか。知里さん風に考えると kene(-us-)-pet で「ハンノキ(・多くある)・川」あたりかも知れません。中標津の「計根別」と同じ地名だったんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

キキリベツ川

建根別橋を渡って更に北に向かうと、岩見橋で「ショウジ川」を渡ります(これはおそらく so-us-pet で「滝・ある・川」でしょう)。その後「キキリベツ崖」を北浜覆道で通り抜けると「キキリベツ川」です。「この先世界遺産地域です」という看板のあるところですね。

では、今回も「羅臼町史」から。

○キキリベツ
 北浜の一部。川、橋などに名が冠されている。
(羅臼町史編纂委員会・編「羅臼町史」p.58 より引用)

この書き出しもパターン化しつつありますね。もちろん続きがあります。

夷名キキリベツで「蚊(キキリ)の多い川」との意味である。
(羅臼町史編纂委員会・編「羅臼町史」p.58 より引用)

うおっ。kikir は「虫」だとされますが、知里さんの「分類アイヌ語辞典・動物編」には美幌・足寄・広尾で採取した語彙として「蚊」と明記されています(千島では etú-tanne とあるのが少々気になりますが)。

kikir-pet だと「蚊・川」で、知里さん風に補完すると kikir(-un)-pet あるいは kikir(-us)-pet で「蚊(・いる)・川」あるいは「蚊(・多い)・川」だったのでしょうね。

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