2015年7月19日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (268) 「エネコロンベツ川・エオルト沼・ケネチャラシベツ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

エネコロンベツ川

ベカンベ川の西側(下流側)で塘路湖に注ぐ川の名前です。戊午日誌には「イ子ンコロベツ」とあり、明治期の道庁 20 万図には「エ子コロペツ」とあります。

また南に廻り来りて山下に
    イ子ンコロベツ
此辺本川すじ炭焼山後の山の平に成るよし也。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.491 より引用)

前回の記事で当時の武四郎がアイヌ語の語彙に染まりつつある……と書きましたが、ここにもその傾向が見て取れるようです。ぱっと見たところは何の変哲もないようですが、「山の平」という表現が、おそらく「山の崖」を意味すると思われるのですね。「崖」は pira なのですが、「ピラ」という音を「平」という字で記していると思われるのです。

ただ、「平」は日本の古語でも「急傾斜地」を意味するそうですので、「崖」を「平」と書いたのを、必ずしも「アイヌ語に染まっている」とは言い切れないかもしれません。

さて、エネゴリ……じゃなくて「エネコロンベツ」に話題を戻しましょう。うーん、どういう意味かなーと暫し首を傾げていたのですが、e-en-enkor-un-pet あたりでしょうか。これだと「頭・尖っている・岬・ある・川」という意味になります。

エネコロンベツ川の河口あたりに「岬」は無いのですが、エネコロンベツ川を上流に遡っていくと、途中で左右にわかれている部分があり、それが「尖った岬」のように見えるのでは無いかな……と。

エオルト沼

塘路湖の西側、塘路駅の北側にある小さな沼の名前です。e-or-to だと考えると「頭・ところ・沼」となります。塘路湖から釧路川に注ぐ川は、アイヌ風に考えると char(くち)ですから、口の近くの沼なので「頭」と解釈するのもアリと言えばアリかな? と思えなくもありません。

もう一つの解釈は少々無理があるかも知れないのですが、元々は e-or-us-to だったものが、いつしか -us が省略されてしまったのではないか、という推測です。e-or-us-to であれば「頭・水・についている・沼」となるのですが、エオルト沼の北側に山が湿原の近くまでせり出しているところがあります。これを「頭が水についている」としたんじゃないかなぁ……と。

ケネチャラシベツ川

釧路湿原の中を流れる川で、雪裡(せつり)川の支流です。

これは kene(-us)-charse-pet あたりでしょうか。これであれば「ハンノキ(・ある)・滑り落ちる・川」となります。解せないのが charse で、この語は岩肌を流れ落ちるような川に対して使われるもので、湿原をゆっくりと流れる川を形容するには相応しくないのですね。

……ただ、他に解釈のしようが無いのも事実でして(汗)。音だけであれば kene-char-us-pet という解釈も出来るのですが、これだと「ハンノキ・口・ある・川」という、良くわからない意味になってしまいます(ハンノキの口って何?)。

もしかしたら、charse を「ちゃらちゃら音を立てて流れる」と考えれば良いのかも知れませんね。ハンノキの林のなかで心地良い水音をたてて流れるような川なんでしょうか。ということで、今日のところは kene(-us)-charse-pet で「ハンノキ(・ある)・ちゃらちゃら音を立てて流れる・川」としておきましょう。

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