2015年7月26日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (270) 「沼幌・オソベツ川・チョウマナイ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

沼幌(ぬまほろ)

標茶町西部の地名(旧地名?)で、近くを「ヌマオロ川」が流れています。このあたりの釧路川の支流では、お隣の「オソベツ川」と並んで長い部類に入るからか、松浦武四郎の「戊午日誌」にもしっかりと記録されていました。

またしばし下るや右の方小川
     ヌマヲロ
訛りてイマヲロと云。ヌマとは毛髪の事也。ヲロとは在る、または生る等云事也。此川口毛の如き藻有るが故に号しものかと思わる。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.480-481 より引用)

「東西蝦夷山川地理取調図」には「イマラロ」と記録されていたのですが、これで理由がわかった気がします。「イマ」は「ヌマ」が転訛したもので、「ラ」は「ヲ」の誤記だったようです。numa-oro(-pet) で「毛・の所(・川)」と言った感じだったのでしょう。

オソベツ川

ヌマオロ川の東側を流れる川の名前です。ややこしいことに、流域の地名は「下オソツベツ」「中オソツベツ」「上オソツベツ」「奥オソツベツ」と言う風に、「オソベツ」ではなくて「オソツベツ」になっています。ちなみに、「オソツベツ」には「御卒別」という漢字が当てられていたようですが、現在の地形図では全てカタカナになってしまっています。

では、まずは山田秀三さんの「北海道の地名」から。

オソベツ川
 釧路川の西支流,御卒別とも書く。ヌマオロ川の一本上の川の名。オソツペツとも書かれたが,語義不明。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.271 より引用)

ふーむ。続きを見ておきましょうか。

永田地名解は「オソッペッ。川尻の滝」と書いているが,その釧路川に入る川尻の処は釧路大湿原の中で,滝があるとは考えられない。ごく訛った形で残った川名なのではなかろうか。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.271-272 より引用)

確かに、ちょっと良くわかりませんね……。ちなみに「東西蝦夷山川地理取調図」には「ウショロコツ」とあるのですが……余計にわからなくなりました(汗)。素直に読み解けば osor-kot で「尻(の形をした)・窪み」となりますね。あるいは esoro-kot だとすると、この川沿いに交通路があったと考えられそうなのですが、言われてみれば釧路から弟子屈に向かう交通路として使えそうな感じもします。

一方で、「戊午日誌」には次のように記されています。

しばし過
     ウシヨツベツ
右の方小川有、此川ふかくして歩行にて小さけれども越がたし。上に谷地有。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 上」北海道出版企画センター p.480 より引用)

これも素直に us-ot-pet で「入江・多くある・川」と読み解けなくも無いのですが、そもそも川に入江があるのもおかしいような気もします。

明治期の「道庁 20 万図」には「オソッペッ」とあります。これは永田地名解の「オソッ ペッ」という解から来ているのでしょうね。地名の方は「オソッペッ」が「オソツベツ」になり、川名は実際の発音に近い「オソベツ」になってしまった、と言ったところでしょうか。

オソベツ川は釧路川に注ぐので、やはり「川尻の滝」は無いのかなぁ、と思います。それを前提に「ウシヨツベツ」あるいは「オソッペッ」を読み解いていくと、もしかしたら o-situ-pet あたりはアリだったりしないかな? と思ったりもします。o-situ-pet であれば「川尻・(大きな)山の走り根・川」となるので、一応地形には合っているような気もするんですが……。

チョウマナイ川

中オソツベツのあたりでオソベツ川に合流する支流の名前です。意味が良くわからなかったのですが、チョウマナイ……雨の日はチョウマナイ(それは違います)。

ちらっと調べた限りでは、永田地名解などにも記載が無いようです。釧路川から見ると「支流の支流」なので、まぁ仕方がないのかも知れません。

地名解ですが、chi-o-ama-nay で「われら・そこに・(仕掛け弓を)置く・沢」ではないかと考えたのですが、いかがでしょうか。チョウマナイ……雨の日は(やめなさい

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