2015年11月7日土曜日

次の投稿 › ‹  前の投稿

アイヌ語地名の傾向と対策 (295) 「シビナイ川・クチャンベツ川・ヌタプヤンベツ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

シビナイ川

石狩川の支流で、ヤンベタップ川の南側を東に流れています。長さは 4~5 km ほどの川で、結構傾斜がありそうな感じですね。

小さな川なのでソースがあるかなぁと心配していたのですが、知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」に記載がありました。

 シピナイ(Shi-pi-nai 真の・小石・川)
(知里真志保「知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.319 より引用)

文京区小石川のルーツがこんなところにあったとは……(違います)。shi-pi-nay で「本当の・小石・川」あるいは「大きな・ごろた石・川」と見ていいんじゃないかと思います。

大雪山の向こう側の東神楽町にも「志比内」という地名がありますが、おそらく由来は同じなんじゃないかと思われます。

クチャンベツ川

石狩川の最上流のひとつで、水源は五色ヶ原あるいは沼ノ原あたりでしょうか。いかにもアイヌ語由来の感じがプンプンする川名ですが、果たしてその由来は……。

今回も、幸いな事に知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」に記載がありました(厳密にはちょっと違いますが)。早速見てみましょう。

 クチャウンナイ(Kucha-un-nai 狩小屋・ある・沢)
(知里真志保「知里真志保著作集 3『上川郡アイヌ語地名解』」平凡社 p.319 より引用)

ふむふむ。あれ「小屋」って kas じゃなかったっけ? と思って「小辞典」を見てみたところ……

kucha クちゃ 山小屋; 狩小屋。──kas(↑)が一時的なその場しのぎに立てるものであるのに対して, これはふだんに立てておく小屋。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.53 より引用)

へぇぇ、そうなのですね。そう言えば kas には「仮小屋」という意味もあったのでした。

というわけで本題に戻って「クチャンベツ」ですが、kucha-un-pet で「山小屋・ある・川」だと見て良いのかな、と思います。

ヌタプヤンベツ川

アイヌ語地名の傾向と対策」で取り上げる地名や川名は、だいたい地理院地図で拾っているんですが、拾う時点で「あ、これは楽勝っぽいなぁ」と思う場合と「うわ、なんじゃこりゃ……。訳わからん」となる場合があります。で、たまに「あ、これは楽勝~」だった筈のものが「なんじゃこりゃあぁ®」に化けてしまう「爆弾案件」を踏んでしまうわけですが、今回は「やや爆弾案件」を踏んでしまったようです。

と言うのも、地理院地図では縮尺によって「ヌタプヤンベツ川」「ヌタプカンベツ川」と表記が揺れている上に、1982~83 年頃の「土地利用図」に至っては「メタクヤンベツ川」になってしまっているのですね。「ヌタプヤンベツ」「ヌタプカンベツ」の時点では「あるある」と思っていたものの、新たに「メタクヤンベツ」が出てきた時点で「もーあかん……」と思ってしまったものです。

非常に残念なことに、知里さんの「上川郡アイヌ語地名解」にも「ヌタプヤンベツ川」の記載がありません。ただ、「北海道地名誌」に次のような記載が見つかりました。

 ヌタプヤンペツ川 石狩川の水源に近く,忠別岳方向から流れる小川。アイヌ語で川の曲がり目の冷水川の意。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.325 より引用)

ふむ。nutap-yam-pet と考えたわけですね。nutap の解釈が難しい……というのは前回も話題にしましたが、この辺りでは「湿原」と考えていいのかな、と思います。ということで nutap-yam-pet は「湿原・冷たい・川」と解釈しておきましょう。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

前の記事次の記事

www.bojan.net
Copyright © 1995- Bojan International

0 件のコメント:

最近の記事