2016年4月10日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (332) 「和寒別川・サットムクシュナイ川・歌笛」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

和寒別川(わかんべつ──)

新ひだか町南東部、鳧舞川の東側を流れる川の名前です。現在も川の名前として健在ですが、地名は「美野和」(三石美野和)に変わってしまいました。

戊午日誌「東部計理麻布誌」には次のように記されていました。

行こと凡戌亥子の方に向て十七八丁にて
     ワツカンベツ
東岸相応の川也。後ろはウラカワ、キナチヤウシの川に成る也。赤楊・柳多く生たる中え入込也。其名義はワツカウンベツにして、よき水涌出すと云事也。魚類は鱒・鯇・桃花魚多しと。上に直に山有。西岸弐十丁余の谷地なり。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.497 より引用)

ふむふむ。また、永田地名解にも次のように記されていました。

Wakka un be  ワㇰカ ウン ベ  飲水アル處 谷地水アリテ飲料ニ供ス
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.267 より引用)

どうやら wakka-un-pet で「飲水・ある・川」あるいは wakka-un-pe で「飲水・ある・ところ」と考えて良さそうですね。三石には「油出ル所」と記録されている地名もあるので、飲水の所在は重要事項だったとも考えられそうです。

サットムクシュナイ川

鳧舞川の支流の名前です。明治期の地形図にも「サットムクシュナイ」と記されているのが確認できましたが、他には目ぼしい情報がありません。さてどうしたものでしょう……(さぁ)。

道内で類似の地名を探してみたところ、斜里に「サットムㇱナイ」という川が見つかりました。「サットムㇱナイ」は sar-tom-us-nay とのことですので、「サットムクシュナイ」だと sar-tom-kus-nay あたりでしょうか。意味は「葦原・側面・通る・沢」になるのかなと思います。

歌笛(うたぶえ)

鳧舞川中流の集落の名前です。旧・三石町なので「三石歌笛」が正式?な地名かも知れません。では、早速ですが更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」を見てみましょうか。

 歌笛(うたぶえ)
三石町鳧舞川の上流の部落。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.84 より引用)

のっけから見解が割れちゃいましたが(「中流」か「上流」か)、気にせず続きを見てみましょう。

アイヌ語のオタ・エプイ(蕾形の砂山の意)に当て字をしたので、この近くにある現在円山と呼ばれている。一八二メートルの山の名からでたものである。
(更科源蔵「更科源蔵アイヌ関係著作集〈6〉アイヌ語地名解」みやま書房 p.84-85 より引用)

更科さんと言えば、「……で、……で、……で、……で、……である。」という句点の無い文章が特徴なのですが、今回は珍しく逆に余計な句点「。」があるように見えますね。ちなみに「円山」は、現在の地形図では標高が 184.3 m とされています。

「オタ・エプイ」であれば ota-epuy で「砂・小山」と考えれば良いのですが、明治初年の記録には「フタフヱト村」とあるのだとか。「フタフヱト」だとさっぱり意味がわかりませんが、これがもし nutap-etu であれば意味が通じるかも知れません。

nutap は「川の湾曲内の土地」で etu は「鼻」あるいは「岬」という意味になります。一応、実際の地形に多少は即しているようにも思えるんですよね……。ということで、nutap-etu で「川の湾曲内の土地・岬」という説を唱えてみたいのですが……(かなり弱気)。

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