2016年6月19日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (349) 「チャワンナイ沢・カシコツオマナイ沢・鹿止内沢・ナメワッカ沢」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

チャワンナイ沢

シュンベツ川の上流部に合流する支流の名前です。さすがに茶碗が無かった、ということでは無いと思います。

シュンベツ川については戊午日誌「東部志毘茶利志」が詳しかったのですが、「イトンナイ」から先は「ニセイハクシナイ」「ソウウンナイ」「ニセイケシクシナイ」そして「シノマイシユンベツ」で終わってしまっています。いずれも「左りの方小川」なので、右支流(南側)の「チャワンナイ沢」の情報は無さそうです。

ということで、完全にスクラッチで考えるしか無いのですが、cha-(w)an-nay で「柴・ある・沢」あたりかな、と思いました。

単語レベルで考えると cha-an-nay なのですが、アイヌ語は母音の重出が忌避されるので、時によっては間に w を挟むこともある……とのことで。

このあたりのシュンベツ川は、今は獣道すら無いような秘境ですが、他の地名からは仮小屋の存在も推察されるので、燃料となる「柴」の存在が川の名前になった……と考えてみたのですが、いかがでしょうか。

カシコツオマナイ沢

チャワンナイ沢の更に上流部でシュンベツ川と合流する支流の名前です。ここも少々問題アリの地名(川名)でして、Open Street Map を見ると「カシュツオマナイ沢」とあるのですね。例によって地理院地図がやらかしている可能性も十分考えられるのですが、どっちが正しいのか、ちょっと判断がつかない状態です。

仮に「カシコツオマナイ」が正しいのだとすれば、kas-kot-oma-nay で「仮小屋・跡・そこにある・沢」だと考えられそうな気がします。問題は「カシュツオマナイ」が正だったとすると……という話なのですが、kas-ot-oma-nay あたりだとすると「仮小屋・多くある・そこにある・沢」になるのでしょうか。ただ、「仮小屋」が複数(多く)あるというのも、ちょっと考えにくいんですよね。

もう一つの読み方としては、kasu-ot-oma-nay で「渡渉する・いつもする・そこにある・沢」でしょうか。この「カシコツオマナイ沢」はコイボクシュシビチャリ川から峠を越えた先に位置します。実は、シュンベツ川沿いに道が無い代わりに、カシコツオマナイ沢から南北に道が通っているのですね。ですので、なんやかんやで良く渡る川だった、と言えなくも無いかな、とか……。

マイナス材料としては、kasu-ot という形の地名を聞いたことが無い、というところでしょうか。

鹿止内沢(しかしない──)

カシコツオマナイ沢から更に上流部に遡ったところで合流している支流の名前です。最初は「カシナイ」かと思ったのですが、沢の南側に「シカシナイ山」があったので、おそらく「しかしない」で良いのだと思います。

先ほどの「カシコツオマナイ沢」では、kaskasu かで少々揺れましたが、今度こそ kas(仮小屋)で良いのではないかと思います。si-kas-nay で「主たる・仮小屋・沢」ではないかと。

知里さん的に補正を加えるならば、おそらく元々は si-kas(-un)-nay 「主たる・仮小屋(・ある)・沢」で、-un が略されたということかなぁと思います。

ナメワッカ沢

シュンベツ川最上流部の支流の一つです(左支流=西支流)。北側に「ナメワッカ岳」という山もあるのですが、何故かナメワッカ沢の源流部ではなく、シュンベツ川の源流部にあります。謎ですね……。

「ナメ」って何だっけ……と思ったのですが、実はごくごく一般的な語彙だったようで、なんと知里さんの「──小辞典」にそのまんま記載がありました。

nam-wakka なㇺワㇰカ 【H 南】冷水。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.63 より引用)

あらら。基本中の基本だと思っていた yam-wakka も、北海道の南の方では nam-wakka だったのですね。ということで、nam-wakka-nay で「冷たい・水・沢」と考えて良さそうです。

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