2016年9月4日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (371) 「パンケトボチベツ沢・シュンベツノ沢・ルトランシュンベツ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

パンケトボチベツ沢

panke-tok-ot-i-pet?
川下の・突起物・群在する・ところ・川
panke-top-ot-i-pet?
川下の・竹・群在する・ところ・川


ペンケルナイ沢と宿主別川の合流点から更に上流に進んだところで合流している支流の名前です。例によって例の如く、「パンケトボチベツ沢」の隣には「ペンケトボチベツ沢」もあります。

ありがたいことに、戊午日誌「東部沙留誌」に記載がありました。

また少し上りて
     ハンケトマヲ(トコチ?)ベツ
     ヘンケトマヲベツ
ニ河とも左りの方小川也。其名義は此処鹿多く有るが故に、夜の内より相互に精を出して取ることを云しとかや。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.33 より引用)

これはどうにも意味が取りづらいですね……。panke-ket-oma-pet とでも考えたのでしょうか(これだと「川下の皮張枠・そこにある・川」になりそうですが)。

この「ハンケトマヲベツ」については、秋葉実さんによって「ハンケトコチベツ」ではないか、との註がつけられています。確かに、現在の地形図では「パンケトボチベツ」となっているので、「パンケトコチベツ」のほうが近そうな感じもします。

「パンケトコチベツ」だとすると、panke-tok-ot-i-pet あたりの解が考えられるでしょうか。これだと「川下の・突起物・群在する・ところ・川」となるのですが、「突起物」が具体的に何を指すのかが良くわかりません。

繰り返しになりますが、現在の地形図では「パンケトボチベツ」となっています。ここから解を考えてみると、panke-top-ot-i-pet の可能性も出てきます。これだと「川下の・竹・群在する・ところ・川」となりそうですね。実際に竹が多いようであれば、この可能性も出てくるのかなぁ、と思います。

シュンベツノ沢

sum-pet
西・川


パンケトボチベツ沢の合流点から宿主別川を更に源流部に向かって遡ると、宿主別林道の「春別橋」のところで東からシュンベツノ沢が合流しています。シュンベツノ沢を遡る保留寒山の北の尾根にたどり着きます。

さて、今回も戊午日誌「東部沙留誌」に記載がありました。さっそく見てみましょう。

また少し上り
     シユンベツ
左りの方也。是左(西)川と云儀也。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 下」北海道出版企画センター p.34 より引用)

いや~、一瞬で片付いてしまいました。sum-pet で「西・川」だったようです。sum(西)があるなら menas(東)が無いとおかしいんじゃないか……という疑問も出てくるのですが、「東西蝦夷山川地理取調図」を見てみると、近くに「メナシヘツ」の文字が見つかりました。

もしかしたら、現在の「パンケシュクシュナイ沢」が「メナシヘツ」に相当するのかもしれません。戊午日誌「東部沙留誌」には「メナシベツ」の記載は無く、代わりに「ハンケホリカシユクシナイ」と「ヘンケホルカシユクシヘツ」が併記されています(「ナイ」と「ヘツ」が対になっているというのも面白いですが)。

「ホリカ」は horka のことでしょう。確かに宿主別川は東から西に流れているのに、これら二つの支流は西から東に流れているので、horka(後戻りする、U ターンする)と呼ぶに相応しいです。現在はなぜか horka が落ちてしまっているので「下宿主内沢」「上宿主別沢」と言った趣になってしまっていますね。

ルトランシュンベツ川

ru-turasi-sum-pet
路・それに沿って上る・西・川


シュンベツノ沢の東支流の名前です。この川を遡ってゆくと、新冠湖の北側、ホルカンノ沢の支流に出ることができます。

ちょっとそのままではうまく解釈できないのですが、ru-turasi-sum-pet で「路・それに沿って上る・西・川」ではないかと思っています。おそらく「ルトラシシュンベツ」だったのが、どこかのタイミングで「ルトラン──」に誤記されたんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?

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