2016年11月19日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (392) 「ホロカンベ川・オピラクシナイ沢川・アイカップ沢川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

ホロカンベ川

horka-an-pe
U ターンする・そうである・もの
horka-an-pet
U ターンする・そうである・川


かつて国鉄富内線の「豊田駅」があったあたりを流れている支流の名前です。厳密には鵡川の支流の「キナウス川」が穂別豊田の集落の東側を流れていて、集落のすぐ北側で「ホロカンベ川」が「キナウス川」に合流しています。ホロカンベ川は鵡川の支流の、その更に支流ということになりますね。

戊午日誌「東部武加和誌」には次のようにありました。

 扨此キナウシヘツの事を問ふに、川口より少し上りて
      ホリカンベ
 左りの方小川有。此川屈曲して海老の如くなりたるより号るとかや。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中」北海道出版企画センター p.543-544 より引用)

はい。ほぼ想像通りの解が出てきました。horka-an-pe で「U ターンする・そうである・もの」か、あるいは horka-an-pet で「U ターンする・そうである・川」かなぁ、と思います。

穂別豊田のあたりでは鵡川はだいたい南南西に向かって流れていますが、ホロカンベ川がキナウス川と合流する直前は東北東に向かって流れているので、ほぼ U ターンしていると言えそうです。

キナウス川

ちなみに、ホロカンベ川が注ぐキナウス川については、「北海道駅名の起源」に記載がありました。

  豊 田(とよた)
所在地 (胆振国) 勇払郡穂別町
開 駅 大正 12 年 11 月 11 日(北海道鉱業鉄道)
起 源 もと「杵臼(きなうす)」といったところで、アイヌ語の「キナ・ウシ」(ガマやスゲなどの群生している所)から出たものであるが、水田ができたので豊作を祈って部落名を「豊田」と改めたため、昭和 18 年 8 月 1 日買収の際それに合わせたものである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.98 より引用)

なお、「杵臼」から「豊田」に改められたのは昭和 16 年とのこと。一体何なんでしょうかねぇこの謎の改名ラッシュは……。

オピラクシナイ沢川

o-pira-kus-nay?
河口・崖・通行する・沢
o-pir-un-ne-p?
そこに・傷・ある・そのような・もの


穂別豊田から見て鵡川の向こう側にある和泉下のあたりで鵡川に注ぐ「ルベシベ川」という支流があるのですが、そのルベシベ川の支流の名前です。音からは o-pira-kus-nay で「河口・崖・通行する・沢」のように読めるのですが……。

ところが、戊午日誌「東部武加和誌」には次のように記されていました。

 また少し行
      ヲヒルン子フ
 右の方小川也。此処に水溜に成る瀬有るよりして号しとかや。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中」北海道出版企画センター p.546 より引用)

ん……? これだと o-pir-un-ne-p あたりでしょうか。pir は「傷」だったり「渦」だったり「陰」だったりして解釈がなかなか難しいのですが、「水溜に成る瀬」という記録からは、「渦」……と見せかけて「傷」なのかな、と思っていたりします。

肝心の o-pir-un-ne-p の解釈ですが、「そこに・傷・ある・そのような・もの」と言った感じでしょうか。「ヲヒルン子フ」が「オピラクシナイ沢川」になったのは……何故でしょうね。もともと二通りの名前があったということなんでしょうか。

アイカップ沢川

aykap
できない、届かない


ルベシベ川の支流の名前で、オピラクシナイ沢川の東隣を流れています。厳密にはルベシベ川の支流である「パンケルベシベ川」の、その更に支流と言えそうです。

今更ですが「ルベシベ川」は ru-pes-pe で「道・それに沿って下る・もの」という意味です。平易な日本語に直すと「峠道沿いの川」と言えそうです。

「アイカップ」という地名も道内各所に見られますね。ここも他のアイカップと同じく「弓占い」にまつわる地名のようです。ということで戊午日誌「東部武加和誌」を見ておきましょう。

 扨此モルヘシベの方少し上る哉
       アヘカフ
 右の方小川有。其上に小丸山一ツ有。此上を矢を越さじと土人一同に勝負をするに、中々越がたき故に号るとかや。本名アイカツフ、其名義は不出来と云事也。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中」北海道出版企画センター p.546 より引用)

はい。aykap は「できない」という意味で、もう少し意味を掘り下げて「届かない」と解釈する流儀もあるようです。

アイカップ沢川の上流には川がふた手に別れているところがあって、その間に小さな山があるように(地形図からは)見受けられます。この小山の向こう側まで弓矢が届くかを試すけれども、なかなか越えられない……と言ったところなのでしょうね。うまく越えられたならば、それは吉事の予告だということになるのだと思います。

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