2016年12月11日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (398) 「パンケシケレベ沢川・ニタカイ沢川・島呂布沢川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

パンケシケレベ沢川

panke-sikerpe(-un-pet)
川下の・キハダの実(・ある・川)


長かった「むかわシリーズ」も、そろそろ終わりが見えてきました。「パンケシケレベ沢川」は、チクニナイ川の北を流れる支流の名前です。更に北側には「ペンケシケレベ沢川」も流れています。

戊午日誌「東部武加和誌」には、「シケレベ」と「ヘンケシケレベ」の二河川が出てきます。「ニタカイ」の上流に存在すると記されていますが、実際には「ニタカイ沢川」の下流に存在します。このあたりは松浦武四郎も聞き書きに依ったとしているので、情報の信頼性が少々落ちるのかもしれません。

また少し上り
     シケレベ
右の方高山の間小川有。また此名義は五味子多く有るより号る。本名シケレベウンヘツのよし也。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中」北海道出版企画センター p.594-595 より引用)

地名解のほうは、これ以上ツッコミどころの無い形でまとまっていますね。sikerpe(-un-pet) で「キハダの実(・ある・川)」ということでしょう。「パンケシケレベ」であれば panke-sikerpe(-un-pet) で「川下の・キハダの実(・ある・川)」ということでしょう。

「ペンケシケレベ」であれば penke-sikerpe で「川上の・キハダの実」ですね。

ニタカイ沢川

nitat-kay(林間の)湿地・折れる
nitay-kay 森・折れる


ペンケシケレベ沢川の北側を流れている東支流の名前です。「東西蝦夷山川地理取調図」には「ニタツイ」と記されていますが、他の記録では概ね「ニタカイ」のようです。

ということで、今回も戊午日誌「東部武加和誌」から。

また少し上りて
     ニタカイ
右の方小川。此名義はむかしは樹木がよかりしが、近頃大風にて皆倒れしによって此名有りしと。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中」北海道出版企画センター p.594 より引用)

kay には「折れる」という意味があるので、あとは「ニタ」をどう考えるかですが、nitat-kay で「(林間の)湿地・折れる」と考えるか、あるいは nitay-kay で「森・折れる」あたりかなぁ、と思います。

ここで思い出されるのが「東西蝦夷山川地理取調図」の「ニタツイ」という表記で、これを素直に読み解くと nitat-i で「(林間の)湿地・ところ」となります。ですので「ニタカイ」も nitat-kay の可能性があるんじゃないかな……などと思ったりもしますが、果たしてどうでしょうか。

島呂布沢川(しまろっぷさわ──?)

suma-rupne-nay
石・大きくある・沢


ニタカイ沢川が鵡川と合流する地点から、少し北に遡ったところで鵡川に合流する西支流の名前です(東西蝦夷山川地理取調図には「シュマルフ子ナイ」という川が「ニタツイ」の下流側に東支流として描かれています)。

ちなみに、「島呂布」(しまろっぷ)という地名は道北の美深町にも存在します。詳しくはアイヌ語地名の傾向と対策 (129) 「恩根内・小車・島呂布」をご覧ください。

今回は、久しぶりに永田地名解(鍋好き)を見てみましょうか。

Shuma Rupne nai   シュマ ルㇷ゚ネ ナイ   大石川
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.213 より引用)

今回は鍋が出てくることはありませんでした。まずは一安心です。

続いて戊午日誌「東部武加和誌」も見ておきましょう。

またしばし上に
     シユマルフ子ナイ
右の方相応の川。此川両岸峨々として川中大岩蔟々と立並び有故に号る也。シユマは岩の事、ルフ子はごろゝゝ有る儀なり。
(松浦武四郎・著 秋葉実・解読「戊午東西蝦夷山川地理取調日誌 中」北海道出版企画センター p.594 より引用)

はい。どうやら美深の「島呂布」と由来も同一っぽい感じですね。suma-rupne-nay で「石・大きくある・沢」と考えて良さそうです。

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