2017年1月15日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (408) 「神威脇・穴澗岬・幌内」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

神威脇(かむいわき)

kamuy-ewak-i
神様・おわす・ところ


神威脇は奥尻島西岸では最大の集落で、漁港や温泉があります。山手の湯浜集落には大きなホテルもありますね。同名の川もあり、源流を遡ると神威山があります。

西蝦夷日誌には次のように記されています。

上にホヤ石(立岩)、持立石(立岩)、セタイツキ(岩磯)等難所也。此所山に上り、岬を越てカムイ脇(岩)、穴澗(岩洞)、此所種々奇岩有ども、船ならで行難と。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.22 より引用)

「ホヤ石」と「穴澗」の名前は、現在の地形図でも確認できます。「持立石」こと「モッタテ石」は、「ホヤ石」と「神威岩」の間にあるようです(現在の地形図では確認できず)。

あとは「セタイツキ」と「カムイ脇」の位置を比定すれば良いのですが、東西蝦夷山川地理取調図には「セタイツキ」のみ記されていて「カムイ脇」の文字がありません。

西蝦夷日誌によると、「カムイ脇」は「岩」とあり、「セタイツキ」は「岩磯」とあります。これらの特徴を元に「穴澗岬」から地名を比定してみると、「カムイ脇」が「屏風立岩」で、「セタイツキ」が「神威脇」であった可能性もありそうな感じがします。

「セタイツキ」という地名は、実は「東蝦夷日誌」にも室蘭の地名として出て来るのですが、他の記録と突き合わせると実は「セタイワキ」だった可能性がありそうなのですね。

奥尻の「セタイツキ」も、実は「カムイワキ」と対をなす地名で「セタイワキ」だったと考えることもできそうな気がします。seta-ewak-i で「犬・住んでいる・ところ」となるのですが、このほのぼのした地名は、北隣にある kamuy-ewak-i(「神様・おわす・ところ」)との対比と考えるべきかな、と思うわけです。

「神様しか住めないようなヤバいところ」の近くに、「犬も住んでるようなところ」がある、という考え方ですね。

最終的には、seta-ewak-i の名前を kamuy-ewak-i が乗っ取ったんじゃないかと考えているのですが、やっぱ「犬」よりも「神様」のほうが箔がつくから、と考えたんでしょうかね……?

穴澗岬(あなま──)

ane-ma?
細い・澗


「アナマ」は道内各所で見られる地名です。たとえば奥尻の対岸の乙部にも同名の岬があるのですが、

穴澗、岩壁に穴有るにより号る也。
(松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.251 より引用)

このように、和語由来ではないかと考えられることが多かったようです。

ところが、「アナマ岩」が礼文島に存在したり、「穴澗湾」や「アナマ」が色丹島にも存在したりします。中でも色丹島の「アナマ」は東西蝦夷山川地理取調図にも記載があるため、割と古くからの地名であることが想像できます。

地形上の共通点としては、「アナマ岩」や「アナマ岬」のように岩礁、あるいは岬状になっていることが多いところでしょうか。どう解釈したものかと小一時間以上は悩んだのですが、ane-ma で「細い・澗」と解釈するしか無いかなぁ、というのが現時点での結論です。

ちなみに、ちょっと探した限りでこれだけの「アナマ」が見つかりました。まだいくつもありそうですね。

穴澗岬(奥尻島) https://goo.gl/maps/grLrN3aV9972
穴澗岬(乙部) https://goo.gl/maps/AzHRYybt4hJ2
アナマ岩(島牧) https://goo.gl/maps/nH2RTcHd9vH2
アナマ岩(礼文島) https://goo.gl/maps/8LKwHrEQvi72
穴澗湾(色丹島) https://goo.gl/maps/pSvEdoXY9TR2
アナマ岬(勇留島) https://goo.gl/maps/oYyFk9CawCA2
アナマ(志発島) https://goo.gl/maps/ZseLmnEG1MU2

幌内(ほろない)

poro-nay
大きな・沢


神威脇・穴澗岬から少し北に行ったところにある地名で、同名の川も流れています。幌内川の下流域はかなり大きな谷なので、poro-nay で「大きな・沢」というネーミングも極めて順当なものに思えますね。

西蝦夷日誌にも次のように記されていました。

下りポロナイ(川有)、當島第一の川也。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.22 より引用)

まぁ、そうなりますよね。

北国岬(ほっこく──?)

……と、これだけでは流石にちょっと寂しいので、幌内の南にある「北国岬」について。そもそもどう読むかもわからないのですが、仮に「ほっこく──」と読むのであれば、あるいは pok-ok-oma あたりである可能性があるかもしれません(北海道測量舎五万分一地形図 後志国に「澗國北」との記載がありましたので、もともとは「北国岬」の南側の入り江?が「北国澗」だった可能性がありそうです)。

pok-ok-oma で「下の・うなじ・そこに入る」と読み解けるのですが、pok を「西の」と解釈し、「うなじ」を「北国岬」の鞍部とすれば、pok-ok-oma でそこに分け入った先にある入り江のことになるんじゃないかと……。

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