2017年2月19日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (417) 「ホロシツナイ川・オサンナイ川・志根津川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

ホロシツナイ川

poro-chis-nay
大きな・中凹み・沢


蘭越駅の西側に「大谷」という集落があり、そこから北に向かうと「栄橋」という橋で尻別川の北側に出られます。ホロシツナイ川は栄橋を渡った先の尻別川北岸を流れる支流の名前です。

「竹四郎廻浦日記」には次のような記載がありました。

本川少し上りて ホロチシナイ、大なる淵有るよし。並て アカホリ、シユウキナウシナイ、ヤシユンハツタラ、此辺に南部川と云往昔南部より山稼人多く来り住せし処有と。然し是にも今は一軒も無よし也。
(松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.347 より引用)

はい。ホロシツナイ川は、問題の「南部川」の手前に位置するということになりますね。「ホロシツナイ川」の原型?が「ホロチシナイ」なのであれば、poro-chis-nay で「大きな・中凹み・沢」と読み解けそうです。

実際に、ホロシツナイ川のあたりは山の鞍部になっていて、三和集落に抜ける通り道になっています。「ホロチシナイ」が「ホロシツナイ」に化けてしまったのは、音韻転換か、あるいは chissitu(山の走り根)と取り違えたか。おそらくは前者じゃないかと思うのですが、どうでしょう。

オサンナイ川

o-san-nay
そこで・山から浜へ出る・沢


ニセコ連峰(西山)の雷電山あたりから南に流れて尻別川に合流する支流の名前です。東西蝦夷山川地理取調図には「ヲサンナイ」とありますね。

丁巳日誌「報志利辺津日誌」や西蝦夷日誌にも記載があるのですが、残念ながら川名の由来については触れられていません。西蝦夷日誌の記載はこんな感じでした。

フリタンナイ(同)、ヲサンナイ(左川)、ホロムイ(大淵、和人深澤と云)、水勢追々強し。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.88 より引用)

ということで地名解ですが、「オサンナイ」ですから、o-san-nay で「そこで・山から浜へ出る・沢」と考えて良いのでは無いでしょうか。沢にしてはそれなりの長さがありますし、また勾配もそこそこあるので、雨が降った時は結構な勢いで水が「落ちてくる」のではないかな、と想像してみました。

志根津川(しねづ──)

sin-not?
山・崎


オサンナイ川の北西隣を流れる川の名前です。一見和名に見えるのですが、時折強烈なナックルボールを繰り出してくることで定評のある「北海道地名誌」には次のように記されていました。

 スネジ川 古くは志根津川とも書いた。元名はアイヌ語らしいが不明。雷電山から南流して尻別川下流に注ぐ右支流小川。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.177 より引用)

「元名はアイヌ語らしいが不明」というテキトーさが痺れますね。そんなわけで東西蝦夷山川地理取調図を確認してみたのですが、残念ながら「志根津川」や「スネジ川」に相当する川を見つけることができませんでした。

「東西蝦夷山川地理取調図」では、「ヲサンナイ」の隣川は「フイタウシ」と記されています。「西蝦夷日誌」には「ワイタウシナイ」という記録がありましたが、両者は同一の川を示している可能性がありそうです。

ワイタウシナイ(左小川、和人シメチラ川と云)往古シメシラと云土人住せしと云。ホンナイ(左小川、和人ヤチ平と云)、此邊より樹木多く、別て秦皮(チキシヤニ/アカダモ)大木有。椴は山に見ゆる也、岸には柳・桑・赤楊(ケネ/ハン)計也。カヤノマ(右川)、此澤よりヲタスツ〔歌棄〕領ホロベツの上え昔し道を開き、其處の唐檜(えぞまつ)を出せしと。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.88 より引用)

ちょっと引用が多めですが、前後の位置関係を見るためですので、どうかご容赦いただきたく。「カヤノマ」は、おそらく現在の「茅沼川」と考えて良いでしょうから、茅沼川より海側で北から南に尻別川に注いでいる川(上流に向かって「左川」)は「ホンナイ」あるいは「ワイタウシナイ」のどちらかと考えられそうです。

「志根津川」が「ホンナイ」で、更に下流側の「森別川」が「ワイタウシナイ」と考えることもできそうなのですが、「森別川」は別の名前で蝦夷日誌に記載があるため、この考え方も却下できます。まぁ、要するに「志根津川」は「ワイタウシナイ」だと考えたい、ということなんですけどね(汗)。

西蝦夷日誌の記述によると、「ワイタウシナイ」は「シメチラ川」という別名があったようです。「志根津川」「スネジ川」とは似ているようで似ていないのが残念な感じですが……。

さて、肝心の地名解ですが、「ワイタウシナイ」は「フイタウシナイ」の誤字であると仮定すれば、puy-ta-us-nay で「エゾノリュウキンカの根・採る・いつもする・沢」と読み解くことができます。

また、現在の川名である「志根津川」「スネジ川」は、sin-not で「山・崎」あたりだったのでないかと考えてみました。いかがでしょう?

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