2017年2月26日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (419) 「昆布・目名・チリベツ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

昆布(こんぶ)

{tokom-po}-nupuri
小さなコブ・山
kom-p?
曲がる・もの(川)


そろそろ蘭越町シリーズも終わりだなぁ……などと思っていたのですが、超有名な大物地名をすっ飛ばしていたことに今頃気づきました(汗)。「昆布」は函館本線の駅もある、有名かつ謎な地名です。

永田地名解には次のように記されていました。

Konpo nupuri   コンポ ヌプリ  昆布ノ山 往古海嘯ノ時此山上ニ昆布多クアリタルニ名クト
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.181 より引用)

はい。では次行きましょうか(ぉぃ)。駅名ならおまかせ「北海道駅名の起源」を見てみましょう。

  昆 布(こんぶ)
所在地 (後志国)磯谷郡蘭越町
開 駅 明治 37 年 10 月 15 日(北海道鉄道)
起 源 アイヌ語の「トコンポ・ヌプリ」(小さなコブ山)から出たものである。むかし大津波のときコンブがこの付近にかかったなどという伝説があるが、これは昆布という字に無理にこじつけた話であって、もとコンポヌプリを混保岳と書いたものであり、コンプと関係があったわけではない。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.29 より引用)

更科源蔵さんの「アイヌ語地名解」にも、ほぼ同じ内容の文章が記されていました。「──駅名の起源」も更科さんが担当した可能性がありそうですね。

アイヌ語で「昆布」は sas と言うのですが、一方で和語の「昆布」もアイヌ語に借用されていたようです。道内には「昆布」のつく地名があちこちに見られます(根室の「昆布盛」や釧路の「昆布森」、浦幌の「昆布刈石」など)。これらはいずれも和語の「昆布」に由来すると考えられます。

ところが、昆布系地名の総本山である「昆布」に限っては「昆布とは関係ないよ」というのは面白いですよね。更科さんは {tokom-po}-nupuri で「小さなコブ・山」と考えたようですが、確かに昆布駅の南西にそれっぽい山があるようにも見えます。

現在は昆布川をずーっと遡った先に「昆布岳」がありますが、これは標高 1000 m を越える山なので、tokom-po と言うにはちょっと大きすぎるような気がします。

ということで、更科説が妥当なのかなぁと考えるしかなさそうなのですが、敢えて試案を出してみると(出さなくてもいいのにkom-p で「曲がる・もの(川)」とは考えられないでしょうか。昆布川は、尻別川から見ると見事に 90 度右に曲がって流れているので、こういった解釈はできないかなぁ……というお話でした。

目名(めな)

mena
細い枝川?


国鉄……じゃなくて JR 函館本線で昆布駅から西に向かうと、次が蘭越駅で、更にその次が目名駅です。「目名」は道南に偏在する謎の地名のひとつですね。

ということで、駅名ならお任せ(ry

  目 名(めな)
所在地 (後志国)磯谷郡蘭越町
開 駅 明治 37 年 10 月 15 日(北海道鉄道)
起 源 もと「磯谷(いそや)」といったが、明治 39 年 12 月 15 日「目名」と改めた。「目名」はアイヌ語の「メナ」(細い枝川)から出たもので、「磯谷」はアイヌ語の「イ・ショ・ヤ」(岩岸) から出たものである。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.28 より引用)

ふむふむ。確かに知里さんの「──小辞典」にも次のように記されていました。

mena メな ①上流の細い枝川。②【シズナイ】たまり水。
(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」北海道出版企画センター p.59 より引用)

ただ、山田秀三さんは「北海道の地名」にて次のような疑問を呈していました。

諸地の目名と同じように,ここでも意味がはっきりしない。永田地名解は,尻別川筋ではメナは「細川」と訳している。永田氏は,尻別川筋は虻田のアイヌから聞いて訳をしたのだと書いている。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.463 より引用)

と、ここまでは良いのですが……

 松浦氏西蝦夷日誌はこの目名の処で「メナ。其義解せず。同名処々に有。何れも平地にて水深く屈曲遅流の処也。恐は是を云か」と書いた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.463 より引用)

まぁ、これも良いですよね。「西蝦夷日誌」は永田地名解よりも昔に書かれたものですから、特段おかしな話ではありません。

ただし必ずしも深い川ばかりではない。支流説,細流説,水溜り説,泉池川説等があるが,これも後人の研究に待ちたい。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.463 より引用)

「泉池」を意味する mem という単語があるのですが、それと結びつけて考える流儀もあるようです。他の三説については知里さんの「──小辞典」の解釈を継承しているようですね。道内に偏在する謎地名なので、これから処々で目にすることになりそうです。

チリベツ川

chir(-ot)-pet?
鳥(・多くいる)・川


目名川は目名駅の西側を流れていますが、チリベツ川は目名駅の少し下流側で目名川に合流する支流の名前です。

この「チリベツ川」ですが、信憑性に少々の難があるような気がする「北海道地名誌」に記載がありました。

 チリベツ川 目名川の左支流。アイヌ語では鳥川の意。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.177 より引用)

「信憑性に少々の難がある」と毒づいてみたものの、この解釈については同感です。chir-pet で「鳥・川」だったのでしょうね。おそらくは chir-ot-pet-ot が略されたのではないでしょうか(鳥・多くいる・川)。

ちなみにこの「北海道地名誌」、「チリベツ川」の下には「南部川」の項があるのですが、

 南部川(なんぶがわ) 尻別川中流の右支流。南部から団体が入植したのでこの名がある。
(NHK 北海道本部・編「北海道地名誌」北海教育評論社 p.177 より引用)

うーん……(汗)。「団体での入植」は主に明治期以降だと思うので、ちょっと違うような気もするような……。

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