2017年6月4日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (443) 「最内沢・嗣内・切梶川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

最内沢(もないさわ)

o-mo-nay
河口・静かである・沢


せたな町瀬棚の南に「最内川」という川が流れていて、河口から上流に 2 km ほど遡ったところに「最内沢」の集落があります。

西蝦夷日誌は「ヲモナイ(小川)」とあります。また東西蝦夷山川地理取調図にも「ヲモナイ」と記されていました。o-mo-nay で「河口・静かである・沢」と考えて良いのではないでしょうか。

嗣内(つくない)

chi-kus-nay
我ら・通行する・沢


せたな町瀬棚の北部、中歌と虻羅の間の地名で、同名の川もあります。

東西蝦夷山川地理取調図に「チクナイ」という記載がありました。うーん、なんだろう……と思ったのですが、どうやら永田地名解に記載があったようです。

Chikushi nai  チクシ ナイ  通路ノ澤
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.130 より引用)

わかってしまえば「あ、なーんだ」という解でしたね。chi-kus-nay で「我ら・通行する・沢」と考えて良さそうです。

嗣内川を遡ると途中で二手に分かれているのですが、南側の支流を遡ると「ガンピ岱」を経由して馬場川の支流に出ることができます。それにしても「嗣内」を「つくない」と読ませるのは傑作ですよね。確かに「嗣」で「つぐ」と読みますからね。

切梶川(きりかじ──)

kirikatci?
鮭の産卵場?


せたな町瀬棚区虻羅から更に北に向かうと「長浜」という集落がありますが、その長浜集落の北側を流れている川の名前です。戦前の地形図を見ると、切梶川の北側に「切梶」と書いて「キリカツ」と読ませる地名も記録されています。

西蝦夷日誌には次のように記されていました。

キリカツチ(大立岩岬)名義、大船の腰當が上りしとの義也。
(松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(下)」時事通信社 p.41 より引用)

辞書を見ると、kir には「骨髄」や「足」という意味もあるとのこと。「大船」と言うとつい巨大なフェリーのようなものを想像してしまいますが、丸木舟よりも大きな、木材で組まれた船のことなのかもしれません。「カツチ」あるいは「カッチ」が何を意味するのかは、ちょっと読み解けませんでしたが……。

一方で、永田地名解には全然違う解が記されていました。

Kirikatchi  キリカッチ  鮭ノ産卵場 石狩上川、勇拂郡ノ川ニ同名アリ「イチヤン」ト同義
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.129 より引用)

実は、以前にむかわ町の「キリカツ沢川」の地名解を検討した時に、この「切梶川」を引き合いに出していたのでした。永田っち……じゃなくて永田さんは「キリカッチはイチャンのことだ」としていますが、現時点では永田地名解以外でこの語彙を確認することができていません。

知里さんの「分類アイヌ語辞典 動物編」にも kirikatči=ican という記載がありますが、これは永田地名解の記述を典拠としているので、妥当性の証明としては少々弱いんですよね。

ということで、正体不明の「キリカッチ」こと「切梶」ですが、西蝦夷日誌の解もちょっと良くわからないですので、むかわの「キリカツ沢川」と同様に、永田地名解の kirikatci で「鮭の産卵場?」とするしか無いかなぁ、という感じです。

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