2017年12月10日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (493) 「貫気別川・壮滝別川・オロエンヌキベツ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

貫気別川(ぬっきべつ──)

nupki-pet
濁り水・川


留寿都村を水源に、真狩村と洞爺湖町の境界を経由して、豊浦町の豊浦駅近くで噴火湾に注ぐ川の名前です。平取町にも全く同名の「貫気別川」がありますね(そういや平取のほうは「ぬきべつ」だったような気もしますが)。

やはりと言うべきか、意味も同じだったようで、永田地名解には次のように記されていました。

Nupki pet  ヌㇷ゚キ ペッ  濁川
永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.174 より引用)

nupki-pet で「濁り水・川」と考えて良さそうですね。

「東蝦夷日誌」には、もう少し詳しく記されていました。

フレベツプト(川幅十餘間、くり船渡し)夷家有。赤河の義也。此川濁りたる故に號く。本名ヌツキベツ〔貫氣別〕なり。其儀も同じく濁り川也。
松浦武四郎・著、吉田常吉・編「新版 蝦夷日誌(上)」時事通信社 p.53 より引用)

なるほど、貫気別川の別名は「フレベツ」だったんですね。上流から火山性の赤土を運んでくる川だったのかもしれません。

ややこしいことに、「竹四郎廻浦日記」には「ヌフチヘツ」(ヌケケヘツ?)という川の次に「フレヘツ」という地名が出てきます。川の西側の集落が「フレヘツ」と呼ばれていた可能性がありそうな感じです。

壮滝別川(そうたきべつ──)

so-takne-pet
滝・短い・川


豊浦町の北端に「山梨」という集落があるのですが、山梨のあたりからまっすぐ南に流れて貫気別川に合流する支流の名前です。

ご存知の通り、アイヌ語で so と言えば「滝」という意味です。わざわざアイヌ語と日本語で繰り返して言いたくなるほどだったのかと思ったのですが然にあらず。永田地名解には次のようにありました。

Sō takune pet  ソー タㇰネ ペッ  瀧短キ川
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.177 より引用)

おお、なるほど。確かに知里さんの「小辞典」にも takne で「短くアル」とあります。so-takne-pet で「滝・短い・川」と考えて良さそうですね。

壮渕川(そうぶち──?)

壮滝別川の支流に「壮渕川」という川がありました。多分「そうぶち」と読むんじゃないかなーと思うのですが、あるいは「そうふち」かもしれません。

so-puchi であれば「滝・入り口」となります。壮渕川が壮滝別川に合流するあたりでは、深く切れ込んだ滝のようになっているので、それを形容して「滝の入口」と呼んだのでしょうか……?

ただ、昔の地形図には「ホンタン子ベツ」と記されているようにも読めるので、「壮渕川」は「壮滝別川」にインスパイアされた和名の可能性もありそうです。

オロエンヌキベツ川

oro-wen-{nupki-pet}
その中・悪い・{貫気別川}


豊浦町北東部に「大和」という集落があります。立派なループ橋がかかっているのをご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、オロエンヌキベツ川はそのループ橋のすぐ近くで貫気別川に合流しています。

永田地名解に、次のような記述が見つかりました。

Oro wen nupki pet  オロ ウェン ヌㇷ゚キ ペッ  川中惡キ川 歩シガタシ
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.177 より引用)※ 原文ママ

ふむ。やはり oro-wen-{nupki-pet} で「その中・悪い・{貫気別川}」と読むのでしょうね。注によると「歩きづらい」とあるので、それこそ川底に緩んだ赤土が堆積しているとか、そんな感じの川だったのかもしれません。

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