野心的な男の悲劇
異変に気づいたのは、新幹線の切符を受け取ろうと機械にクレジットカードを通した、その時だった。記憶
そう、かねてよりずっと野心的であり続けている私にとって、それは当たり前のオペレーションだった。出張の日程が決まると同時に、胸元から純白の DoCoMo N901is を取り出し、Bookmark からいつものサイトにアクセスし、いつも通り禁煙車の最後列 A 席をゲットしたのだった。列車はのぞみ 1 号。JR 西日本が誇る、日本一の最高速度 300km/h で走る Silver Bullet(銀の弾丸)だ。試練
私は、この駅には IC カードの精算機が備え付けられていることも既に知っていた。慣れた手つきで PiTaPa を通し、精算券を入手した私は、「エクスプレス予約受け取り」との文字が燦然と輝く券売機の前に立った。もちろん、漆黒の Express Card を忘れるようなヘマはしない。カードをケースの中から取りだし、いつも通り、おもむろに機械に差し込んだ、その時だった。異変
「お 預 か り 中 の 切 符 は あ り ま せ ん」私は思った。「馬鹿な!」と。先週、確かに純白の DoCoMo N901is(もういい)で予約をしたではないか。トイレにもほど近い 5 号車の最後列 A 席を、席番リクエストで押さえたではないか。このコンピュータは何を血迷って居るんだ。
葛藤
ただ、そう言い聞かせる自分の脳裏に、もう一人の自分が囁きかけた。「おめー、もしかしてやっちゃったんじゃねーの?」と……。そう。決済したつもりで、最後の最後で決済が通っていなかったという、良くある話があるのではないか。システム上の制約か、自分の設定のせいかはわからないけれど、私の元にはエクスプレス予約の予約完了メールは届かない。だから、決済したつもりで、実はできていなかった、というシナリオは、十分にあり得るのだ。確信
しかし、私には、拭いきれない不安があった。いや、不安と言うよりは確信といったほうが正しいのかもしれない。私は、とてつもないことをやってしまったのではないかという、あの時の感覚にも似たものを、既に感じ取っていたのだ。とても受け入れがたい、とてつもないことを……。破滅
私は、心中の不安を表に出すことなく、おもむろに大量のストラップが眩しい純白の DoCoMo N901is(もういいってば)を取り出し、Bookmark より「いつものサイト」にアクセスして、履歴を確かめた。そこには、やはり、私の確信に満ちた不安を具体的に示した記録が残されていた。「2007 年 1 月 28 日」の決済記録が……。そ れ っ て 前 日 じ ゃ ん ! ! !
現実とは、至上のオペラよりも儚く脆い
というわけで、私は、使いもしなかった、新大阪から博多までの乗車券+新幹線指定券に、12,000 円近くつぎ込んでしまったのでした。12,000 円近くと言えば、その、アレですよ。私の年収の 0.** % に相当する大金ですよ。いや、年収に占める割合なんてどーでもいいんです。何がシャクだって、使いもしない切符に金が吸い取られるってことが……。お金をドブに捨てるくらいなら、いくらでも有効な使い途があったろうにと思うと、悔しくて口惜しくて……。どう考えても、「死に金」ですからねぇ……。これで銀魂の単行本が何冊買えたんだろう、などと思うと……(発想がセコいな斯くして私は囚われの身となる
さて、今回の悲劇について滔々と(うそつけ)述べたなかで、「あの時の感覚」という、謎めいた一節があったことにお気づきでしょうか。はい、これだけでは単なる謎かけになってしまいますので、明日の「傾向と対策」に行く前にご紹介しておきますと、この Bojan さんは、昨年の 11 月中旬に、近畿圏内の某自動車道(いわゆる「高速道路」)を、考え事をしながら、約 120 km/h 弱で走行していました。夜中だったので、うかつにも二人乗りのスカイラインがいたことに気づかなかった Bojan さんは、ほどなく、スカイラインに装着された赤色回転灯に導かれる中、\25,000- の上納金を納めるように諭されたのでした。そう、乗用車の運転歴約 15 年(もちろんゴールド免許)にして、生まれて初めて「スピード違反」で検挙されてしまったのでした。過去の検挙歴もたったの一回、それも、停止したバスをスクーターで追い越したときに「イエローラインを跨いだ」という素晴らしい理由で、\6,000- ほど上納したことがあっただけなので、いろんな意味でショックでしたねぇ……(まぁ、今回のケースは、別件でかなり精神的にまいっていたのが原因の大半を占めるのですが)。
おわりに
ま、何のことはない、どっちも自業自得なだけに、泣くに泣けないです……。‹ 前の記事 › 次の記事
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