2025年12月4日木曜日

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メモリアルシップ八甲田丸 (12) 「余裕ある操船」

 

4F「航海甲板」の前方にある「ブリッジ」(操舵室)にやってきました。このモスグリーンのカラーリングは、まさしく国鉄そのもの……!
昔の国鉄の電車も、運転室の中はだいたいこの色(灰緑色と言うのですか?)だったんですよね。

【ご注意ください】この記事の内容は、特記のない限りは 2017 年 8 月時点のものです。各種サービスの実施状況や利用時間などが現在と異なる可能性があります。

プロペラ制御盤

巨大な操舵室の真ん中……面白いことに、窓のすぐ後ろではなくて更に数メートルほど下がったところにあるんですよね……の左側には「プロペラ制御盤」が。
えーと、これはスクリュープロペラの制御を行うものですよね。スロットルレバーは飛行機のものと似た感じもするのですが、レバーが二つあるのは何故なんでしょうか? ……あ、よく見ると中央にも横向きのレバーがありますね。

Wikipedia の「津軽丸 (2代)」の記事に答らしきものがあったのですが、左右のレバーは「推進用プロペラ翼角操縦レバー」とのこと。

「翼角操縦」とは何ぞや……と思ったのですが、可変ピッチプロペラでは「翼角」を調整することで船の速度を変えられるのだとか。つまり、二本のレバーは「スロットルレバー」では無いのですが、船の速度を調整するレバーという意味では通じるものがあるのかも……?(車で言うトランスミッションとも似た感じが)

この件に限らず、船内設備などについては「津軽丸(2代)」の記事に詳述されていたようですね。……後でちゃんと読んでおきます。

舵制御盤・通信制御盤

船の「ブリッジ」は「操舵室」と言うくらいですから、やはり「舵制御盤」がど真ん中のお立ち台の位置にありました。左側が「プロペラ制御盤」で右側が「通信制御盤」ですが、「通信制御盤」がこの位置にあるのは大型船ならではでしょうか。
「通信制御盤」の真後ろだったと思うのですが(摩周丸が確かそうだった)、「無線通信室」がありました。手前にテーブルのような場所があるのは海図などを見るのに使ったのでしょうか……?
「通信制御盤」の右隣にはレーダー装置がありました。
今は大抵の船に AIS の搭載が義務付けられていて、衝突コースにある船を認識した時点で警告が発せられる……と思っていたのですが、搭載義務があるのは

  • 総登録トン数 300 トン以上の国際航海する船舶
  • 500 トン以上の非国際航海の船舶
  • 国際航海の全旅客船

とのこと(漁船や小型船には搭載義務は無いそうです)。https://www.marinetraffic.com/ のような Web サイトは AIS の情報を地図上にプロットしたもの……ということになりますね。

ただ、20 世紀後半の「冷戦時代」にはこんな便利なものは無かった筈なので、そのため目視とレーダーによる監視(および衝突可能性の「計算」)によって衝突を回避していた……というのが実際のところだったと思います。こうやって考えると一昔前の航海は「五里霧中」で行われていたのだなぁ……との思いを新たにしますが、当時はそれが当たり前だったんですよね。

ご安航を祈る

窓には「二次信号」「ご安航を祈る I Wish you a pleasant voyage」と書かれた紙が貼られていました。下には「For Aomori Port」とあるのですが……
下には「国際信号旗」と書かれた紙が張ってあり、何かのテストに出てきそうな旗の一覧がありました。右隣の黒板? は明らかに英語で何かが書かれているのですが、これは一体……?
これとほぼ同じものを「摩周丸」のブリッジでも見た記憶があるのですが、国際信号旗で「U」と「W」を合わせると「ご安航を祈る」という意味になる……ということですね。意味……というか由来というか、何らかの背景があってそういう意味になるのだと思われるのですが、このあたりも掘り下げると面白そうな予感が……?
(2013 年 10 月、函館市青函連絡船記念館 摩周丸のブリッジにて撮影)

「余裕ある操船」

船員さんのマネキンの前方には「速力計」「翼角指示計」「舵角指示計」「風向計」「風速計」「傾斜計」などが並んでいました。
よく見ると「速力計」の横に「余裕ある操船」という標語が。いやはや全くご尤もですね。大型船なので常に「一歩先を見据えた操船」が必要になる……ということなのでしょう。

ジャイロコンパス

これは左舷側だったと思いますが、昭和の喫茶店で良く見かけたアレ……ではありません(そもそも大きさが全然違いますが)。
今は正確な位置と方位(と時間)は GPS でゲットできますが、「八甲田丸」の現役時代はそんな便利なものは使えなかったので、正確な方位(磁北ではなく真北)を得るために「ジャイロコンパス」を使用した……ということのようです。
すっかり過去形で記してしまいましたが、「ジャイロコンパス」は今も 500 トン以上の船には設置が義務付けられているとのこと。キャリブレーションが面倒くさそうな印象もあるのですが、外部からの入力を必要とせずに自律的に方位を得られるという点で、メンテナンスの手間を上回るメリットがあるということなんでしょうね。

八甲田丸の号鐘

「ジャイロコンパス」の近くには「双眼鏡」と「八甲田丸の号鐘」がありました。「号鐘」は濃霧や吹雪などで視界が遮られた際に、自らの船位を周囲に知らせるために鳴らす鐘だったとのこと。どことなく「熊よけの鈴」と共通するものがありそうな……。
号鐘の後ろには甲板に出るドアがありますが、甲板(と煙突展望台)は右舷側のドアから出入りするようになっていて、左舷側のドア(このドア)は閉鎖されていました。

スイッチ類いろいろ

ドアの横にはロープの結び目が「これでもか!」とばかりに並んでいました。このあたりは船乗りさんの長年の智慧の結晶……ですよね。
その横には何やらスイッチが並んでいたのですが、各種の灯火や投光器などのスイッチのようです。スイッチの下に対象が書いてあるので、それを見れば間違えることは無いのでしょうけど、なかなか厳しい UI ですね。
このようなコントロールパネルもありました。火災を検知した際にそれを知らせるもの……みたいです。

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