2011年6月25日土曜日

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北海道のアイヌ語地名 (59) 「汐首岬・志海苔・立待岬・函館」

 

えー……。ついに 2nd Stage も本日で無事最終回を迎えられそうです。ちなみに 3rd Stage の取材が既に終わっていたりして、制作快調だったりします(←)。……これ、全然最終回っぽくないな。

汐首岬(しおくびみさき)

sir-pok
山・の下
(典拠あり、類型あり)
渡島半島の東側(通称:亀田半島)の最南端が「汐首岬」です。ちょっと由来がわからないので、「角川──」を見てみましょうか。

古くは汐くび・塩くびなどとも書いた。渡島(おしま)地方南部,亀田半島の南沿岸部。地名はアイヌ語のシリポクに由来し,「山下」を意味する(北海道蝦夷語地名解)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.633 より引用)
やけにあっさりしているので「本当かな?」とも思ったのですが、山田秀三さんの「北海道の地名」を見ても大差ない記載しかないので、この通りだと考えるしか他無さそうですね。sir-pok で「山・の下」といったところです。

志海苔町(しのり──)

ukaw-sirar
重なり合う・岩
(典拠あり、類型あり)
函館空港のあるあたりの地名です。函館空港と言えば、奥さんに日頃の生活環境の劣悪さを散々詰られたことにブチ切れたベレンコ中尉がミグを飛ばしてやってきた所として有名なところですね(←

では、これも同じように「角──」を見てみましょう(略しすぎ)。

古くは志濃利・志苔・紫海苔などとも書いた。渡島(おしま)地方南部,津軽海峡沿岸の志海苔川流域。地名は,アイヌ語のウカウシラリ(重なる岩の意)のシラリが転化したもの(北海道蝦夷語地名解)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.655 より引用)
山田秀三さんのセカンドオピニオン?もほぼ同様でした。うーん、この辺は永田翁の「──地名解」しかソースが無いのかも知れませんね。ukaw-sirar で「重なり合う・岩」といった意味のようです。ちなみに sirar は単なる「岩」ではなく、「海の岩」というニュアンスがあるようです。

立待岬(たちまちみさき)

pi-us-i?
小石・多くある・所
(? = 典拠あるが疑問点あり、類型あり)
函館山の麓、東端にある岬です。ここの名前はちょいとしたミステリーだったりするのですが、今回も「──」から(←

「たちまちざき」ともいった。函館市の南端,函館山の東にある岬。岬名はアイヌ語のピウシ(岩上で魚を待ちヤスで捕る処の意)に由来するといい,更科源蔵の「アイヌ語地名解」ではピウシは「石のある処」の意とする。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.836 より引用)
一目で明らかなように、説明になってません(笑)。仮に「岩上で魚を待ちヤスで捕る処」だったとしても、それがなぜ「立待」なのかがわかりません。更に言えば、pi-us-i は更科源蔵さんの言う通りで「小石・多くある・所」でしかなく、「魚を待ちヤスで捕る処」とは解せないのですね。

ところが、永田方正翁は「──地名解」の中で pi-us-i に似た地名を「立待」としたことが何度かありました(すいません。さすがにカウントはしていないのですが)。何らかの意味があったのにそれが失われたのか、あるいは永田翁の勘違いなのか、真相は藪の中です。

函館(はこだて)

us-oro-kes
湾・内・末端
(典拠あり、類型あり)
2nd Stage のトリを飾るのは、やはりこの地名しか無いでしょう! ということで……。またしても「─」から引用してみましょう(←←

渡島(おしま)地方南部,亀田半島基部。函館の古名は宇須岸(うすけし)といい(福山秘府/新撰北海道史5),臼岸とも書いた。宇須岸は湾の端を意味するアイヌ語のウショロケシ(北海道蝦夷語地名解),あるいは海潮を受ける飛島の意味のウショムケモシリに由来するという(蝦夷実地検考録/函館市史資料1)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.1154 より引用)
えっと、us-oro-kes で「湾・内・末端」ですね。で、oro が中略されて us-kes になった、と……。あるいは……え、なんだこれ……。えーと、us-omke-mosir だと「湾・咳をする・島」となりますね。後者についてはかなり意味不明なので、もしかしたら酷い誤訳をしているかも知れません。

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