2013年6月8日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (113) 「虎杖浜・アヨロ・登別」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものである)

虎杖浜(こじょうはま)

竹浦の西隣の駅で、道央道には「虎杖浜トンネル」もありますね。ここは知る人ぞ知るアイヌ語和訳地名です。もともとの地名は「クッタルシ」なのですが、これは kuttar-us-i で「イタドリ・群生する・所」という意味です。

というわけで、「イタドリ」について、うぃきぺさんに聞いてみましょう。

イタドリ(虎杖、痛取、Fallopia japonica)とは、タデ科の多年生植物。別名は、スカンポ、イタンポ、ドングイ。ただし、茎を折るとポコッと音が鳴り、食べると酸味があることから、スイバをスカンポと呼ぶ地方もある。
(Wikipedia 日本語版「イタドリ」より引用)

はい。もうお分かりかと思いますが、「イタドリ」を漢字にすると「虎杖」とも書くそうなのです。折角なので、最後に我らが「角川──」(略──)から。

地名の由来は,アイヌ語の「クッタルシ」で「いたどりの群生する処」を意味し(北海道の地名),イタドリの漢字表記の虎杖と,海浜に面することによる。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.552 より引用)

はい。これ以上文句のつけようがない解釈ですね。

アヨロ

フィリピンの元大統領のような名前ですが……違うか。いや、関係無いか。虎杖浜の西の方を流れている小河川です。さらに山を越えた先には「ポンアヨロ川」もあります。

これはちょっと難しそうな地名です。今回も「角川──」()を見てみましょう。

〔近世〕江戸期から見える地名。アイロ・アヱロ・アエウロ・アイオヨともいい,藍縷・逢寄とも書いた。東蝦夷地シラヲイ場所のうち。胆振(いぶり)地方中央部,太平洋沿岸のアヨロ川流域。後方に倶多楽(くったら)湖がある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.96 より引用)

ふむふむ。今度はロシアの航空会社のようにも思えてきました(←)。続きを見てみましょうか。

地名はアイヌ語のアイオロオコタンにより,「矢そこに群生する集落」の意(幌別町のアイヌ語地名)。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.96 より引用)

なるほど。ay-or-o-kotan で「矢・そこ・多くある・集落」ですか。まだ続きがあるようです。

なお,「蝦夷地名考并里程記」には「アイロ。夷語アヨロなり。則アイヲロの略語にて,矢を上るといふ事……夷地の夷人往返之節、此崎へ矢を放ちて神を祭る故此名ありといふ」とある。
(「角川日本地名大辞典」編纂委員会・編「角川日本地名大辞典 1 北海道(上巻)」角川書店 p.96-97 より引用)

「蝦夷地名考并里程記」は上原熊次郎が著したものですが、後の松浦武四郎もこの説を紹介しているとのこと。ay-woro で「矢・納める」との意味だと言うのですが、はてさて、woro にはそんな意味があったのかな……と。ここに限らず、「アイ」のつく地名には解釈が難しいところが多いですね。

登別(のぼりべつ)

登別と言えば、言わずと知れた有名温泉地ですね。道央道には「登別東 IC」と「登別室蘭 IC」がありますが、昔からの登別に近いのは「登別東 IC」です。

さて、その「登別」は、nupur-pet に由来するのですが、その意図するところを正確に理解するために、山田秀三さんの「北海道の地名」を見ておきましょう。

従来このヌプㇽをただ濁っていると訳され,バチラー博士は muddy と書いて来たのだが,少し違っていたようだ。ヌプㇽは元来「巫力のある」意。それでどぎつい感じが出,水の場合は色のついたのをいった。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.387 より引用)

ふむふむ。何かシャーマニズムっぽいニュアンスなんでしょうか。続きを見てみましょう。

幕末の蝦夷地明快では「ヌプㇽとは強いと申す事」と書かれ,少し遅れたころの野作東部日記では「水色の濃しと云ふ夷語なり」と述べられ,最近では知里博士も同じ説を書かれた。
(山田秀三「北海道の地名」草風館 p.387 より引用)

ということで、nupur-pet で「(水の)色の濃い・川」と理解しておけば良さそうです。実際に、昔の登別川は随分と濁っていたそうなのですが、今は上流で温泉として汲み上げることが増えたのも影響しているのか、流れは昔ほど濁ってはいないとのこと。

一度この目で確かめてみたいものです(そこか)。

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