2014年11月8日土曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (227) 「仁田布川・金華・ハナワビバウシ川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

仁田布川(にいたっぷ)

JR 石北本線の安国(やすくに)駅のあたりで生田原川に合流する支流の名前です。てっきり「にたぷ」だと思っていたのですが、これで「にいたっぷ」と読むのだそうですね……。

さて、この「ニイタップ」ですが、東西蝦夷山川地理取調図には「ニタッハヲマフ」とあります。永田方正の「北海道蝦夷語地名解」にも

Nitat pa omap  イクタラ川筋 ニタッ パ オマㇷ゚
(永田方正「北海道蝦夷語地名解」国書刊行会 p.459 より引用)

とありますね。意味は「吥坭ノ端ニ在ル川」と書いてあるのですが、「吥坭」って何なんでしょう……(汗)。

nitat-pa-oma-p であれば「湿地・かみて・そこにある・もの」となりますね。なるほど、確かに安国から遠軽の中心部にかけては生田原川と湧別川に挟まれた盆地状の土地になっているので、かつては湿地帯だった可能性も十分考えられそうです。

「ニタッパオマㇷ゚」の「オマㇷ゚」が省略されて、「ニタッパ」がいつしか「ニイタップ」になってしまった、といったところなのでしょうね。

金華(かねはな)

えー、これはアイヌ語っぽくない予感もするのですが、「北海道駅名の起源」にちょいと面白いことが書いてあったので、引っ張ってきました。さっそく見てみましょう。

  金 華(かねはな)
所在地 (北見国)常呂郡留辺藁町
開 駅 大正 3 年 10 月 5 日
起 源 もと「奔無加(ぽんむか)」といい、アイヌ語の「ポン・ムカ」(子であるムカ川)から出たものである
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.212 より引用)

むむっ。確かに金華駅の近くには奔無加川が流れていますが、駅名も「奔無加」だったとは知りませんでした。どうやら 1951 年に「金華」に改称したみたいですね。道内の駅名は戦時中に改称されたものが多いのですが(軍の要請もあったのかも)、ちょっとその波に乗り遅れた感もあります。

で、また文が続いていたのですが……

が、「ムカ」の意味は不明である。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.212 より引用)

(汗)。

さて、この「奔無加駅」が何故「金華駅」になったのか、という話ですが……

昭和 26 年 7 月 14 日、付近に金鉱があるのと、「無加」の「加」の字を「華」とかえて、「金華」と改めた。
(「北海道駅名の起源(昭和48年版)」日本国有鉄道北海道総局 p.212 より引用)

なるほどー。瑞祥駅名にしても随分と華々しいなぁと思っていたのですが、こんな由来があったのですね。

ハナワビバウシ川

旧・留辺蘂町(現・北見市留辺蘂)は西から東に無加川が流れているのですが、南側を並行して「ハナワビバウシ川」が流れています(留辺蘂町東部の「武華橋」の先で無加川に合流しています)。

また、北見市留辺蘂から見て上流(西側)にあたる留辺蘂町温根湯温泉のあたりには「ペンケビバウシ川」と「パンケビバウシ川」がそれぞれ存在しています。「ビバウシ」は pipa-us-i で「からす貝・多い・ところ」ですから、このあたりでは黒い貝が採れるところが多かった、と言えそうです。

「ハナワビバウシ」の答合わせの前に、古い地図を確認してみたところ、東西蝦夷山川地理取調図には温根湯のあたりに「ヒハウシ」とだけあり、また、明治期の地形図には温根湯のあたりに「パナワピパウシ」「ペナピパウシ」と書かれています。この二川は現在の「パンケビバウシ川」と「ペンケビバウシ川」に相当するようで、現在の「ハナワビバウシ川」とは別だったと言えそうです(ややこしいな)。

なお、「ペナピパウシ」の「フ」は、「ワ」の誤記だった可能性が考えられそうです。

どうやら、留辺蘂から温根湯にかけては「ピパウシ」と呼ばれる川が複数あったために、「パンケ」「ペンケ」「パナワン」「ペナワン」などの接頭詞をつけて区分していた、ということのようです。

pankepa-na はどちらも「川下」を意味しますが、pa-na には「海に近いほう」というニュアンスもあったみたいで(突き詰めれば意味は同じとも言えそうな気がしますが)、このあたりで一番海に近い留辺蘂のピパウシが pa-na-wa(-an)-pipa-us-i で「海・方向・に(・ある)・からす貝・多い・ところ」と呼ばれるようになった……といったところでしょうか。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

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