2017年7月23日日曜日

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アイヌ語地名の傾向と対策 (457) 「意養川・キライベツ沢川・ソロソロ沢川」

 


やあ皆さん、アイヌ語の森へ、ようこそ。

(この背景地図等データは、国土地理院の地理院地図から配信されたものである)

意養川(いやしない──)

e-yas(-us)-nay?
そこで・流し網をする(・いつもする)・沢
i-y-as-nay?
アレ(熊?)・立っている・沢


厚沢部町上里(「俄虫温泉」があります)の上流で安野呂川に合流している支流の名前です。いやー、久々にグッと来る当て字を見つけて楽しいですね(笑)。

元々は「意養苗川」で「いやしなえ──」と読ませていた、という情報も見かけました(読みが正しいかは微妙な感じがしますが)。「苗」の字が消えたのは「生花苗」と似ていますが、「おいかまない」という読みが失われたのに対し、こちらは「いやしない」という読みがそのまま残っているのがお見事!ですね。

この「意養川」ですが、「東西蝦夷山川地理取調図」にも「イヤシナイ」と記されています。また「竹四郎廻浦日記」にも次のように記されていました。

 扨此渡り場より此川の大略を聞取しるし置に、凡廿三丁東岸を上りて イヤシナイ、温泉有。此処湯屋壱軒有。前に小沢一すじ。此温泉諸病によろし。別て其内痰疾によろしと。
松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.240-241 より引用)

「聞いた話だけど」としながらセールストーク満載なのがいいですね(笑)。どんな病気に対して効能があり、中でも痰が良く出る症状に良く効くのだとか。地形図を良く見ると、俄虫温泉だけではなく、意養川の河口部にも温泉マークがあるのですが、こちらがその温泉でしょうか。

肝心の地名解ですが、残念ながら手元で調べた限りではさっぱりわかりません(汗)。e-yas(-us)-nay で「そこで・流し網をする(・いつもする)・沢」とかでしょうか。網をかけるほどの川かと言われると、ちょっと疑問も残るのですが。

i-y-as-nay で「アレ・(挿入音)・立っている・沢」とも考えられたりするでしょうか。「アレ」は言わずもがなのアレ、即ち「熊」のことです。いや、「蛇」の可能性もあるのですが、蛇が立っていたら驚いてしまうなぁ、などと……(上体?を起こして威嚇することはあるかもしれませんが)。

iyasis-nay で「怒っている・川」という可能性もゼロではないかなと思ったりもするのですが、むかわの入鹿別のようなストーリーが思い浮かばなかったので、これも苦しいでしょうか。

キライベツ沢川

kiraw-pet?
(シカの)角・川


北から南に流れて安野呂川に合流する支流の名前です。べ、別に嫌いになった訳じゃ無いんだからねっ!(一体何を言っているのだ

「東西蝦夷山川地理取調図」には「キライベツ川」に相当する川を探しきれませんでした。一方、「竹四郎廻浦日記」には次のような記述を見つけました。

 少し上りて 留の城(湯)、此処二股に成、其左りを キラヘベツと云。半里斗上りて小川壱すじ、此源黒岳より来るとや。
(松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.241 より引用)

キライベツ沢川の源流部には「九郎岳」があるので、これが「黒岳」のことなのでしょうね。東西蝦夷山川地理取調図には「黒タキ岳」と記されていました。

「キライベツ」という音を素直に読み解くと、kiray-pet で「櫛・川」となります。ちょっと考えてみましたが、この川に櫛を連想させるポイントを見つけることができませんでした。

続いて廻浦日記の「キラヘベツ」という記述から、kiraw-pet で「角(つの)・川」ではないかと考えてみました。kiraw は主にシカなどの角を意味するそうですが、もしかしたら鹿の角が良く落ちているような川だったのでしょうか。

あるいは……これは鳥瞰的な視点が無いと難しいかもしれませんが、キライベツ沢川は上流部で綺麗に二手に分かれています。この分かれ方が鹿の角を連想させた……と言う考え方はできないでしょうか。ということで、今日のところは kiraw-pet で「(シカの)角・川」説をプッシュしておきたいです。

キライベツ沢川の近くを通る林道は「帰来別林道」と言うそうです。せっかく帰ってきたのに別れちゃうんでしょうか……(汗)。

ソロソロ沢川

so-esoro-nay?
滝・に沿って・川


安野呂川を更に遡って、厚沢部町清水のあたりで合流する支流の名前です。

「東西蝦夷山川地理取調図」には該当しそうな川の名前を見つけることができませんでした。ただ「キヨタキ」という文字があり、滝の存在を伺わせます。

「竹四郎廻浦日記」にも次のような記述がありました。

又しばしにて 清川、弐三里も上りて清川滝、此処一すじの爆布有。此処迄アンヌルより七里と云。是より又二里を上りてイナヲ峠、落部越え出るによろし。
(松浦武四郎・著 高倉新一郎・解読「竹四郎廻浦日記 上」北海道出版企画センター p.241 より引用)

安野呂川は、ソロソロ沢川との合流点よりも上流部で「上濁川」と「清水川」に分かれます。清水川の最上流部は「精進の沢」という名前の沢になっていますが、これも o-so-us-i で「そこに・滝・ある・もの」の可能性がありそうですよね。

えーと、そろそろ本題に戻って良いでしょうか(ぉぃ)。「ソロソロ沢川」の意味も実のところ良くわからないのですが、so-esoro-nay で「滝・に沿って・川」あたりの可能性は考えられないでしょうか。

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